o(^∀^/[小説]\^∀^)o

□楽しいのは君がいるから
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明日は昴さんとデートの約束をした日です。

昴さんと同じ日に休みが取れたので、ぼくの方からデートに誘いました。

本当は断られたらどうしようと不安だったんだけど

「僕は別にかまわないよ。」

と了承してくれました。それから

「じゃあ、今度のデートは新次郎が何処へ行くか決めると良い。」

そう言われて、ぼくは一生懸命にデートの場所を検討した。

給料の少ない僕では行ける所も限られる。

それに、昴さんは有名人だから、人目の多い場所も出来るだけ避けたい。

ファンが殺到すれば、デートなんて言っていられなくなるし、ぼくと昴さんが付き合っている事は、シアターの仲間たち以外は知らないのだから。

「う〜ん…どうしよう。」

衣裳部屋を片付けながら考えるのは、デートの事ばかりだった。

そんな事ではいけないんだけど、どうしても思考がそっちへ向かってしまう。

その時、衣裳部屋のドアがノックされた。

「新次郎、居るかい?」

「あ、はい、どうしたんですか昴さん?」

「今日は舞台の練習が早く終わったんでね、君の様子を見に来たんだよ。」

「そうですか。ぼくの方はもう少しかかりそうなんです。」

そう答えたぼくに、昴さんは口元に愛用の鉄扇を添え、

「ふっ、どうせ明日のデートの事でも考えていたんだろ?」

そう言っている昴さんの表情は、不敵に微笑んでいた。

「えっ、何で分ったんですか!?」

「分かるさ、君はすぐに顔にでるからな。」

そんなに分りやすい顔してるかなぁ?と片手で頬を擦って見る。

「それで、何処へ行くのは決まったのかい?」

「いえ、まだなんです。色々考えちゃって…。」

「それなら、君が行きたい所にすればいい。」

「ぼくが、ですか?でもそれじゃ、」

それじゃ昴さんの方に迷惑がかかるかも知れません。と言いたかったが、昴さんの方が先に

「心配は要らないよ。それに、僕も新次郎と色々な場所へ行って見たいしね。」

そう言いながら、昴さんの手がぼくの頬に触れた。

じっと瞳を見据えられ、ぼくも昴さんの黒曜石のような綺麗な瞳から目を離せなくなっていた。

心臓の音が昴さんにも聞こえてしまうんじゃないかと思う位バクバクと鳴っていた。

「それじゃ、待ち合わせの時間と場所は、いつも通りで。行く場所、ちゃんと決めておくんだよ。」

微笑を浮かべながら、スルリと撫でるように白く細い手がぼくの頬から滑り落ちた。

そして、背を向けるとそのまま衣裳部屋を出て行ってしまった。
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