真夏の雨
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康志が生きていた頃に『叶えよう』と言ってくれた言葉。
住所不定な上、認知もされてなかった私は生き別れた父親に何時かは逢いたいと願った。母親が一度は愛した男性を見てみたかったし、血の繋がりを感じた事も含まれていた。
例え生きてなくっても、お墓に手を合わせたいと。
ただ、周りは許さなかった…
祖母と母親が恐れたのは私が父親側に行ってしまうんじゃないか。話しに聞けば、相当可愛がっていたらしい。
だから、逢ってしまったら私自身が母親を捨て父親を選ぶんじゃないかという畏れを成していたのだ。
それは何回か思ったりもした。
母親と暮らすより、父親と暮らす方が幸せじゃないか、こんな風に複雑な気持ちに脅えかされる日々が無くなるんじゃないか。
『でも…本当の母親は一人…』
男を取っ替え引っ替えしていても、お腹を痛めて産んでくれた女性。