春夏の傷(想華之章)
□薔薇と緋華
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――――天神界・レイ
季節とりどりが彩られる花畑が存在する。 澄みきった空には、可愛らしい鳥達が羽ばたきながら歌う。
神々が棲む世界。天神界では美しい風景が永久の時間として流れていた。
「―――…つ」
「んっ、父上?」
「お目覚めかな。私の愛しい娘」
太陽の光に照らされると、オレンジ色の髪が緋(あか)に輝く。
陽の眩しさに漆黒の髪をした少女は目を覚ますと自分の名前を呼んだ主(ぬし)の顔を映す。
「こんな所で寝ていたら風邪ひくよ!」
「ゴメンなさい。あまりにも心地良く…」
「裡波が血相を変えて探していたよ…」
「あの、裡波が血相を変えている姿を見てみたいものですね。私を探さなくとも、今日の会議には出るのに…」
風に靡く髪を掻き上げる。
「ねぇ、華月…」
「何でしょう?!父上」
「アラディーナ討伐戦に出てみないか」
「…私に何の利益がありますか。出ない、と片付けたとしても名簿には名が記されているのでしょうけど…」