beatmania UDX
□【夢と現の狭間にて】
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ある日、手紙が届いた。
宛名は自分宛。
そして、送り主は……
【夢と現の狭間にて】
手紙にあった日時にあわせ、指定されたその場所に向かう。
それに書き連ねてあったのは、日時と、場所。
そして、必ず来るようにと言ういっそ脅迫にも似た言伝。
ひどく簡潔に、そして有無を言わせぬ文体だった。
すっかり夜も更け、月光の朧な蒼白い光と、寒々しい街頭の灯が彼を照らし出した。
「………来たぞ。居るんだろう、出て来い。」
眼前の闇に目を凝らし、努めて冷静を装い、闇の向こう側へと話しかける。
そして、しばしの沈黙。
「さすがだな、士朗。」
「―――― !!」
かけられた声に、闇から現れたその姿に、彼は言葉をなくし、息を呑んだ。
どうしてここに。
その思いが、戸惑いが、彼から思考と行動を奪い去ってしまったのだ。
「なぜ…… なぜこんな所に貴方が居るんだ……!」
「親が、この様子を見に来るのがそれほど意外か?」
にやり。
そう形容するのが最もふさわしいであろう笑みで目の前の男性は言い、士朗の様子を観察する。
世辞にも冷静を保っているとは言えない彼だったが、しかし隙はざっと見た限り一つとして見つからなかった。
何事にも対処できるように。
それは、士朗に対する神崎家の教育の賜物でもあった。
――― 合格だ
男性は、士朗の父はその笑みを深くする。