beatmania UDX

□【世界で一人だけ】 後編
1ページ/15ページ






 本当なら穏便に済ませるつもりだったのだ。


 リリスから、学校にさえ出て来なくなった、と聞くまでは。





「ホンマか?

 どういう状況なんや。」



 ユーズの真剣な言葉にリリスは眼を伏せる。




「……家から、風邪、という連絡はありました。



 けれど、一度だけ……連絡が取れて……







 強制的に、お見合い、結婚をさせられてしまう、と……」







 本人の意思を無視し、結婚させる。

 古い慣習の残る旧家だからこそまかり通ってしまう、不条理。

 慧靂には、その事情が良く分かってしまった。



 なぜなら、神崎の分家でもその話が持ち上がり……そして泣いた女性がいたのを見てきたのだから。

 それは幾度と無く繰り返されてきたこと。




「……英利。」


「んぁ?」




 こんなことを頼むのは、本当は気が引けるけれど。

 足は、必要だから。






「彩葉の……梅桐の家まで、俺を運んでくれるか?」


「いいけど………






 ………慧靂、お前まさか……」






 バイクでないと、小回りが効かない。



 茶倉は女性だから、そんなことには向いていない。






 信頼できる、バイクの熟練者が必要だった。





 やろうとしていることは、唯一つ。










「彩葉を、攫う。」





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ