beatmania UDX
□【世界で一人だけ】 後編
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本当なら穏便に済ませるつもりだったのだ。
リリスから、学校にさえ出て来なくなった、と聞くまでは。
「ホンマか?
どういう状況なんや。」
ユーズの真剣な言葉にリリスは眼を伏せる。
「……家から、風邪、という連絡はありました。
けれど、一度だけ……連絡が取れて……
強制的に、お見合い、結婚をさせられてしまう、と……」
本人の意思を無視し、結婚させる。
古い慣習の残る旧家だからこそまかり通ってしまう、不条理。
慧靂には、その事情が良く分かってしまった。
なぜなら、神崎の分家でもその話が持ち上がり……そして泣いた女性がいたのを見てきたのだから。
それは幾度と無く繰り返されてきたこと。
「……英利。」
「んぁ?」
こんなことを頼むのは、本当は気が引けるけれど。
足は、必要だから。
「彩葉の……梅桐の家まで、俺を運んでくれるか?」
「いいけど………
………慧靂、お前まさか……」
バイクでないと、小回りが効かない。
茶倉は女性だから、そんなことには向いていない。
信頼できる、バイクの熟練者が必要だった。
やろうとしていることは、唯一つ。
「彩葉を、攫う。」
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