オリジナル

□序章
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〜プロローグ〜

「第一エリア、占拠されました!」
「続いて第二、第三エリア……応答途絶えた!」

 その場には、戦況を伝える声だけが響く。
 薄暗い、そこは司令官室。
 しかし、そこは同時にオペレータールームの役割をも果たしていた。

「第五……全滅!?」
「くそっ!」
 だん、とその中で一番の年上らしい青年……とは言ってもまだ二十歳前後くらいだろうか……が自分の椅子に付属されている肘掛を叩いた。

 残るエリアは自分達の守るエリアを含めても片手で足りるほどになってしまった。
 それはつまり人間がどんどんと死んでいっていることを意味する。

「……カオシェ!」
 青年はインカムに叫んだ。

『私の出番なの?』
 その場にはいない少女の声がそこに響き、目の前に新たにモニターが出現した。
 まだ十六、十七、と言った所だろうか。まだ幼さの残るその顔は、しかしはっきりと戦士としての顔に変わっていた。


 そして同時にそこに存在する、悲しみ。


「すまない。お前一人に行かせることになるが……」
『いいの。もう私には、戦うくらいしか出来ないんだから。』
 にっこりと笑う。
 いっそ、見ているこちらの方が悲しくなるほどに、毅然と。

「テナータル。」
「あ、はい。今回の敵は確認できただけでも約二百。うち四分の一は指令クラスだと思われます。」
『ふぅん。ま、いいわ。やってみる。』
 オペレーター席に座るさらに幼い少女の言葉に、彼女は軽く受け答えた。
『そのくらいなら、あいつ等は簡単に倒してたんだもの。やらなくちゃ、顔向けできないわ。』


 ここには本来、もう二人居るはずだった。
 そしてその片方は、彼女の……。


「必要になれば、俺たちも出る。ちゃんと救援信号出せ。いいな?」
『……たぶん、出すわよ。』
 そう言ったきり、ぷつんと一方的に通信は切られた。
 ここの所起きていた、正体不明の『敵』の出現。
 そして、原因のはっきりとしない戦闘要員二人の死。
 何かが起こっていることは、誰の眼にも明らかだった。

「……この腕さえ、ちゃんと動けば……っ」

「サキエルさん……」

 自分の腕を握り締め、隻眼の青年は悲しげに言葉を搾り出す。
「畜生……」


「悔しいのは、ここにいるみんな同じです。」


 少女は彼の方を向く。
 その片目は光を映さず、そして動きもせず。
「私だって、できることならカオシェさんと共に戦いたいんです。」

 けれど。

 この欠陥だらけの身体で、何が出来る?

「……さあ、はじめるぞ。」
 年長の青年は立ち上がった。
 彼の体中にまかれた包帯には未だ僅かに血がにじんでいた。



「最後の戦いだ!」



「はい!」
「死力を尽くして!」
 三人の言葉がそこに響く。
 三人だけの声が。







「ミッション・スタート!」




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