キリリク部屋

□【梟】 弐寺DoLL小説
3ページ/5ページ




「どうして避けなかったのよ……っ」


 DoLLと操縦者は精神がつながっている。

 だから、避けようとさえ思えば避けられたはずなのだ。





 避けようとさえ……思ったなら。





「なんでっ」


「ばぁーか……」


 彼は、微笑んで。
 その役割を失ってしまった瞳を細めて、微笑って。













「好きな奴が、そんな思い詰めてて……


何もできないなんて、いやだろ……」













 ああ、あなたは。

 貴方はなんと愚かしい。








 貴方は決して私の心を察してくれぬ。




「約束……っ
した、のに………っ」





 私を泣かさないと。
 一人にしないと。
 約束した。





 貴方が死んでしまったら……私はどうすればいい?


 孤独の中。
 たった一人きりで。


 涙を止めるすべも、知らぬまま。











「笑えよ、ツガル――。」


 吐息と間違えそうなほどに小さな、声。







「笑えよ、ツガル。



 ……泣くな……」






 ふわり、と笑って。

 私の頬に、手を当てて。






「はんかくせ……」

 無理矢理に、微笑む。




 見えて、いますか?

 貴方に、この笑みは見えますか?





 するり、と、彼の手が下へ落ちる。








 閉ざされた瞳。


 もう二度と、何も映すことのない瞳。
 開かれぬ、瞳。






「はん、かくせ……っ」






 ぎゅっと、熱の失せていく彼の身体を抱き締める。


 その光景を、純白の梟、その一羽だけが……


 静かに、見つめていた。






.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ