キリリク部屋
□【ありがとう】
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「おお、やはり似合う!」
兄の嬉々とした言葉に、こっそりと溜息をつく。
着せられているのは、黒い夏服の新作。
別にそれは良いのだが、やたら滅多らに棘付きで。
と、いうか白い服が着たいというのも本心で。
「兄さん……白い服も、着たいのだけれど……」
「いや!
黒い服がもっともに合うのだから、理々奈は黒服だ!」
聞く耳持たぬとはこういうことか。
少し諦め気味に溜息をついてしまう。
「……。」
ぷちぷちぷち………
「ああっ!」
無言で棘を取れば、情けない声が上がる。
見れば、ひどく悲しそうな顔をした兄。
店に並ぶ服の棘を取られるのは諦めていたようだが、さすがに目の前で取られるのには答えたらしい。
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