■しょーと

□記憶
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――記憶。
それは、とても儚いもの――





「…あの、どちら様ですか?」


外は暗く、この部屋は白くて……ベッドが1台置いてあった。木の葉が揺れる音がやけに響く。

俺、笹川辰騎(ササガワ タツキ)は病院に向かっていた。走って走って、何度も転びそうになりながらも…兎に角急いだ。
嫌な知らせを聞いたから……


『あ、辰騎くん!? 私、憂のママだけど。 憂がっ……』


憂。神谷憂(カミヤ ユウ)は俺の幼なじみ。その母親から夕方に1本の電話があった。
それを受けた俺は……顔から血の気が引いてくのがわかり、受話器を床に落とした。


((ガチャン))

『もしもし? 辰騎くん?』


受話器からは憂の母の声が聞こえたが、俺はそれをそのままにして家を飛び出した。


『辰騎くん、落ち着いて聞いて。 憂がね、辰騎くんと別れたあとに交通事故にあって……それで救急車で運ばれて、今○×病院にいるんだけど……。 その事故で頭を強く打ったらしいの。 ……それで、いま手術中なの。』


憂の母はそう言っていた。
そうだ。ついさっきまで俺は憂と話していたんだ。憂は俺の話をニコニコしながらうんうん頷いて……



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