ダイヤのA長編
□第3話
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栄純がマウンドに入り、アップをして
御幸さんの始めるぞ!という一言で東との勝負が始まった。
第3話:相棒
俺は礼さんの隣でこの勝負を見届けることにした。
「いいんですか、高島先生!中学生をマウンドにあげても。」
「高野連にバレたらマズいんじゃ・・・。」
「大丈夫よ!あなた達が黙っていればね!」
「「「Σっ!!」」」
『れ、礼さん・・・;;』
「もちろん、あなたもよ?恵君。」
『分かってますよ。これがバレて俺と栄純の推薦が流れる、
なんてことになったら洒落になりませんから。』
話してる間に勝負が始まるようだ。
栄純の奴、明らかに力んでるな・・・。
周りも固唾を呑んで見ている。
栄純が放った一球目は地面にぶつかりバウンドしてミットに入った。
『栄純・・・またやったな・・・。』
「また?」
『あ、中学の試合の時にアイツとバッテリー組んでたのは知ってますよね?
その時も何度かやったんですよ。』
栄純は時折、無理矢理軌道を変えていた。
『アイツは多分・・・あのコースは打たれると思ったんでしょうね。』
「確かにあのコースは東君の一番得意なコースよ。」
『やっぱりですか。あの御幸って人もヤなことしますね・・・。』
マウンドでは御幸さんと栄純が言い争っていたが話しはついたようだ。
栄純はまた構える。
『(硬さがとれたな、栄純。)』
マウンドでどこか嬉しそうな顔をしているのが見て取れる。
そして再び投げる。
ガンッ
「うお〜〜〜いったぁ!あの人の打球はライト方向でも伸びるぞ!!」
『だが、あれはファールだな・・・。』
「ファール!」
やっぱりな・・・。東は悔しそうにしていて、栄純は驚いてる。
『(速いスイングだが、御幸さんが半歩分ズラして座ることで打たれても
あのコースはファールになる・・・。いいキャッチャーだな、あの人。)』
栄純はどんどん投げていくが、東はファールしか打てないでいる。
「(それにしても、こいつの球・・・投げるたびに球威が増してねーか?
いや・・・球威というよりはボールのキレか・・・。)」
御幸は礼の言っていた事を理解した。
「(ははっ・・・何がストレート一本だ!本人は変化球投げてるつもりねぇんだろうけど・・・
ボールが打者の手元で上下左右に変化しやがる――・・。)」
「フフ・・・いよいよ出始めたわね・・。彼本来の持ち味――・・七色に変化するナチュラルなムービングボール!!」
『そうですね。今自分の投げてるボールに一番戸惑ってるのは、栄純自身でしょう。』