Poem

□炭酸水
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幼稚園から帰って

テーブルの上に置いてあった一杯の水を一気に流し込んだ


びりっ


と口の中が痺れたと思ったら

喉に焼けるような痛みが走って

びっくりして泣き出した


私は
初めて飲んだそれを嫌いになった









小学校に入ったら仲の良い友達が出来た

“お揃い”の好きな友達だった


友達は自動販売機で私の嫌いなそれを買った

お揃いにする為に私もそれを買った


慣れてるかも知れないと思ってジュースと同じ感覚で口に含んだら

やっぱりダメで盛大に吹き出してしました


……友達に向かって


まだ小さい友達は私を嫌いになって

まだ小さい私はそれをもっと嫌いになった












中学三年生の冬

私は受験生だった


苦いモノが嫌いな私は

仕方なくそれを眠気覚ましに飲んだ


少しずつ少しずつ飲んでみたら

良い眠気覚ましになった


私はちょっとだけそれを好きになった












高校に入って初めて恋をした

初めて人と付き合った


学校からの帰り道

自転車を引きながらゆっくりと歩いた


二つの長い影をぼーっと見ながら歩いていると

横からにゅっと手が伸びてきた


その手にはそれが握られていて

その手を辿ると 照れ臭そうに笑う顔があった


その手から受け取ったそれは

いつもより甘い気がした















二回目の受験の年

初めて付き合った人と別れた


徹夜明けでまだ薄暗いうちに 山沿いの坂をゆっくり上った


ぼーっと空を見上げながら

久しぶりにそれを煽った


やっぱり一気はキツいみたいで

鼻の奥がつんとして

ほろりと何かが頬を伝った


真横から差し始める光が白い

優しくて綺麗な朝だった

















後二分で二十歳になる私は

夜風に吹かれながらそれを飲んだ


喉を通る刺激は以前より刺々しくなく感じる


少しは大人になったのかなと思いながら

かえるの合唱に耳を傾けた



今までの自分を思い出しながら最後の一口を飲み干したら


時計の針が12:00を指した







END

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