さなにおさな通常版:1  

□風の吹き抜ける場所
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昼休み半ばの部室にて。
書類に向かう副部長と文庫本を斜め読みしている仁王。会話もなく、それぞれの時間を過ごしていた。
仁王の足元が素足で、真田の膝の上に座っている…という光景でなければ、物静かな参謀やパートナーも混じって多少は賑やかになっていたかもしれないが。
書類に集中していた真田がふと違和感を覚えて意識を現実に戻した。
真田の肩に顎を乗せ、背中越しに読書に耽る仁王に変わった様子は見受けられない。
「なん?」
仁王が緩慢な動作で真田を見上げる。開け放たれた窓から入り込む風が銀糸の何本かと戯れて真田に絡み付いていたらしい。
「ああ…スマンの」
髪が邪魔にならないように仁王が頭を動かすと、思わずほお擦りする形になった。
それがなんだかおかしくて真田も同じように頭を動かし、触れるままに軽い口付けを何度か交わした。
予鈴までの僅かな時間。
それだけで満足した二人は再びお互いの時間に没頭し始めるのだった。

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