さなにおさな通常版:1  

□見えなくても感じていたい
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いつのまにか眠っていたらしい。読みかけの本が枕元に置かれ、身体を冷やさないようにと肌掛けに包まれていた。
傑作だったのが、数時間前の自分と同じ姿になっている真田が隣にいた事だ。
伸ばした片腕に頭を落として俯せに眠っている。
本は仁王が読んでいたものしか見当たらないから、添い寝をしているうちに本格的に寝てしまったのだろう。
そっと身体を仰向きに変え何となく膝に頭を乗せてみた。
それでも真田は目を覚まさない。ごつごつした後頭部の感触に気恥ずかしさが募る。
「さ〜な〜だ。さっさと起きんしゃい」
ありえなさに寒気も走るが、仁王はいつのまにか優しい微笑を浮かべていた。練習を見る側と受ける側。真田は両方だから大変だろうが口には出さんし聞いても言わないだろうと思っていたのに、今日は練習も切り上げて二人してのんびりしているのだと実感して。
最強部長の言葉が絶対と言うわけでもないが、休みと聞いて嬉しくないのは真田くらいだ。仁王は部長と参謀から真田を休ませるよう本人の前で言い付けられた。
その裏に仕組まれた企てに仁王は聡く気付いていたが、自分も噛んでいるから何も言えず、浮かれた気分にはなれなかった。
帰宅したらしたで後回しにしていた用事を片付けるのに忙しい真田を待つ間に眠っていたらしい。
「ま〜た待ちぼうけかぃ。つまらんぜよ〜」
髪を摘んだり鼻を摘んだりしているうちに指が唇を掠めた。吐息にぞくりとして仁王は吸い寄せられるように近付いた。
触れるか触れない程度に頬をはみ少し離れては繰り返す。頭を静かに畳に下ろし上から被さって真田の顔をじっと見つめ続けた。
「もう、しまいか?」
ばっちりと目だけが開いた。ぎょっとして逃げようとする身体を引き寄せ、真田は容赦なく唇を貪り尽くした。
「目が虚になっていたぞ?さては見惚れていたな」
「な…にをアホゥな事ゆうとんじゃ!?離せ!痛いわこの馬鹿力…ッ。…ッ!?」
「………………」
「…ッ さな…?ぁ…!」
真田の肩に爪が食い込む。気にも留めず、真田は仁王に仕掛け続けた。

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