さなにおさな通常版:1  

□ほつれたいと
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寒さに肩を竦めながら歩いていると、雪ですらはねのけそうなご立派な姿が視界に飛び込んできた。
無視すると後で面倒になると思い、自分から声をかけると真田は当たり前のように頷いた。
鼻につく態度だが、気にしなければいいのだと適当な話題を振れば、ぽつりぽつりと会話が成り立つ。
そろそろマフラーでも出す時期かなと聞いてみると、俺にはまだ必要ない。たるんどると続いた。
「そんなん、お前さんくらいじゃ。寒がりな奴もおるんじゃし無理させたらあかんよ」
「…たるんどる」
むっとしていたが言い方はほんの僅かに柔らかい感じがした。
「ほうじゃの。けど風邪とかひかれるよりマシじゃろ?ジャッカルなんて特にな」
それは極端な例だろうとしかめつらしく言うのだが、丸井と二人で寒がる様子を思い出したのか、すこぉし笑っているようにも見えて思わず首を傾げた。
「なんだ?」
「…いや、なんでも」
「おかしな奴だ」
「そうゆうんは面と向かってゆわれるとムカつくんじゃけど?」
「本当の事だろう」
しれっと言うのが気に入らない。
肩のバッグをかけ直すと真田を置いていくつもりで歩みを速めた。
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