小説
□光と闇のセレナーデ
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第1話「崩壊」
カーテンの隙間から差し込む光が少女を照らしていた。
暖かい5月の光が少女を優しく包み込む。
そんなことはつゆ知らず、無意識に光とは反対の方向に体をころんと倒す。
同時にイルカの抱き枕が反回転する。
「むにゃむにゃ」
こんな幸せそうな笑顔を見ていられるならずっとこうしてあげたい。
頬に密着しているイルカさんがいい感じである。
幸せな時間というものは本人の意思とは関係なく終わるものだ。
「起きて。朝ですよ。起きないと遅刻しちゃうぞー」
別にメイドがいるわけではない。
そもそもこの部屋には少女1人しかいない。そしてその少女は今ドリームランドでお楽しみ中だ。戻ってくる気配は全くない。
何が悲しくて楽しいひと時を自分から終わりにする必要があるだろうか。
観覧車にでも乗ってメルヘンな景色をまったり眺めているのだろうか。メリーゴーランドで馬に乗っているかもしれない。付属品として美形の王子様も追加してもよい。
別に妄想を膨らませようとしているつもりはない。
この少女のあまりに幸せそうな寝顔を見ているとそう思いたくなるのだ。
わかっているのは少女自身の力ではもうこの世界に戻るのは不可能だということ。
リアルワールドに戻るためには何らかのアイテムが必要なのである。