♪
□distance
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携帯が鳴っている
うるさい着信音はいつまでも鳴り止まなくて
私は布団に包まったまま手探りに携帯を探す。
そのままふて寝していた私は今が何時かもわからず、ただただ眠っていた。
現実から少しでも逃げたかった
distance
「バカ!」
間違って通話ボタンを押してしまったらしく、マチの怒声が響き渡った
「…マチ」
「あんたずっと携帯も通じないし…何かあったの?」
布団から顔を出すと既に空は夕焼けに染まっていて、部屋は薄暗くなっていた
マチの声を聞いたせいか、起きたばかりで気弱になっているせいか
涙がシーツに滲んでいく
「名無しさん…?」
私の嗚咽に気付いたのか、マチは怒るのをやめて、ただじっと泣き止むのを待っていてくれた
それはマチの優しさなのか、団長命令なのか。
そんなことを考えてしまう自分が心底嫌になった
「団長と何かあったの?」
マチの問いに私は何も言えなくて黙り込んだ
言葉に表すにはあまりにも複雑で。
「話したくないなら無理には聞かない。
泣くほど辛いならさっさと帰って来なよ」
私は声なのか嗚咽なのかわからない言葉を発しながら、何度も頷いた。
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