□distance
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マチとの電話を切ったとき、時刻は深夜を回っていた。


窓を開けると涼しい風がやわらかく入り込む


ゴンもクラピカも、ヒソカもイルミもきっともうここを出て、前に進んでいるのに
私はここで足踏みをしたまま動けずにいる


ハンター試験を受けても、私は何も変わらなかった。


ポケットからハンター免許証を取り出して眺めているうちに、ふとヒソカのことを思い出した。


試験の空き時間にヒソカの携帯の番号を復唱させられていたことを思い出した


記憶を探りながらボタンを押していくと繋がって、何度かの呼び出し音の後にヒソカの声で返事があった。


「もしもし◆」


やけに久々に思えて、私は黙り込んだ。



「クロロに振られたならボクが遊んであげようか?◆」


声を出してないのになんで私だとわかったのだろうか?


「…振られてない」


私がそう言うと、ヒソカが笑っているのがわかる


「何がおかしいのよ」


「キミは本当に素直だねぇ…」


「ヒソカと比べればね」


「おやおや◆クロロとボクじゃ随分扱いが違うじゃないか
しおらしいキミもなかなか良かったけど」


「………」


「心配しなくてもいつか奪ってあげるよ◆」







ヒソカの言っていることはめちゃくちゃだったけど、沈んで重かった気持ちが、軽くなった気がした。



ヒソカに慰められるなんて私も変人なのかもしれない


*つづく*

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