「ご、ごめんね幸村くん、・・・怒った?」 「ううん、怒ってないよ。」 「・・・ほんと?」 「本当。」 「あー幸村くんまじ好きーっ!」 そう言って俺に抱きついた彼女は付き合っているわけではなく普通の友達。俺としては、よくある「友達以上恋人未満」のつもりだけど、やっぱり俺たちは友達の類いなのだ。 そんな俺たちは今日、二人で出かける約束をしていてその待ち合わせに彼女は30分遅刻。テニス部の奴なら軽くぶっとばしてるところだ。が、 涙目で謝ってくる彼女を許さないわけがなく、「ホントありがとう、ホントごめんね」を相変わらず抱きつきながら連呼する彼女の肩を ホント大丈夫だってば、と優しく叩きながら、俺は"俺と彼女の関係"に酔っていた。 歩きながら彼女は「それでねそれでね、」と俺に笑顔で話しかけてくる。それを見る度に俺は、くすぐったいような何とも言えない気持ちになる。 ああやっぱり俺ってこの子のこと好きなんだな。でもきっとそれは彼女も同じ。自惚れとかじゃなくて。お互い気づかないふりをしているだけなのだ。 それでもこの関係が心地良いと言ったら、誰かは俺のことを「情けない」「気持ち悪い」と笑うだろうか。男ならビシッと決めろと言うのなら、自分が女々しいのは百も承知だ。 「それで、友達に好きな人いるの?って聞かれたの」 「何て答えたの?」 「えっとね、」 ヒ、ミ、ツ、って!と人差し指を立ててふふふと言った彼女の笑顔はやはり俺を夢中にさせる。「そんなの人に教えるわけないじゃんね、」彼女は再び笑った。ほら、くすぐったい。 けど、この感じが俺はすごくすごく、 「そう思うでしょ、幸村くん。」 すごくすごく好きだから、もう少しだけ君に惑わされていてもいいかな。そんなことを思って、俺は空を見上げた。 Baby knows 俺たちのこの先なんて誰も知らなくて唯一知ってると言えば神様ぐらいだろうか。 それなら神様、この幸せな感じがいつまでも続くように見守っていてください、なんてね。 ―――― ラストソングス様提出。 ありがとうございました! |