小さなコート
□女の子だから
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多分、分かってはいるつもり
宍戸は結構恥ずかしがり屋だし、恋とかあんま慣れてないんだと思う
でも、でもね?女の子は…
「宍戸、好き」
宍「なっなんだよいきなり!ここ大通りだぞ!」
顔を赤くして慌てる宍戸の言うとおり、ここは大通りで帰宅中の夕方でも人がたくさん通る
「…宍戸は?」
宍「言わなくても分かるだろ!」
また、言ってくれないんだね
分かってるよ、ちゃんとあたしのこと好きだって
わざわざ大通りを通っていっつも一緒に帰るのも、話すとき声が上ずってるのも、手を繋ぐとそっぽ向いちゃうのも
あたしの事を心配して、あたしにドキドキしてるっていう不器用なあなたのちっちゃなサイン
分かってても
「言葉が、欲しいよ」
宍「!え…」
「分かってても、言葉が欲しい」
言葉はいらないなんて、あたしには糞くらえ
欲張りだって自分でも思うけど
「無理矢理、じゃなくていいから。準備、できたらでいいから」
宍「………できた」
「え…」
宍「好き、だ」
真っ直ぐあたしを見て言うのは無理だったらしい。そっぽ向いて、ちっちゃな声だったけど確かに聞こえた精一杯の告白
ほら、あなたの言葉でどんどん心が温かくなってく。なんか、なんか、幸せだって思った
単純だなぁ、あたし。でも、でも、だって嬉しいんだからしょーがないよ
繋いだ手に少し力が入る
「あたしも、好きです」
宍「お前は言い過ぎだ、バーカ」
「照れてる?」
宍「うっさい」
このやり取りをたくさんの通り過ぎる人に見られてたと気づくのは、もう少し後だった
女の子だから
欲張りで、単純なのもいいでしょ?
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