短編&中編小説

□君の特別な日
1ページ/2ページ

イタリアの街の郊外にそびえ立つボンゴレファミリーの本部。


その本部の中で軽く背伸びをしながら廊下を歩く、白いスーツに身を包み、ふわふわのキャラメル色の長い髪を後ろに靡かせながら歩く1人の青年…ボンゴレファミリー10代目ボス、沢田綱吉の姿があった。


「ん〜っ…やぁっと休憩に入れた…リボーンの奴、無茶ばかり言いやがって…」

少し膨れっ面をしてぶつぶつ文句を言いながら歩く綱吉。


ー…と、その時。


「っ!?うわ…っ!?」


突然綱吉は後ろから誰かにぎゅっと抱きしめられる。

最初は突然で何事かと焦った綱吉だったが、視界にうつった藍色の長い髪と自分の一番安心する匂いに苦笑する。


「ー…全くもう…いきなり抱きつくなっていつも言ってるじゃん………おかえり、骸」


「只今帰りました…会いたかったですよ、綱吉くん」

綱吉の耳元に口を寄せて囁くように、わざと低い声で言う骸。そんな骸の声にびくっと体を思わず震わせてしまった綱吉は途端に顔を真っ赤にさせる。骸は綱吉に後ろから抱きしめているため綱吉の顔は見えないが、耳が赤くなっているのが見えたので綱吉の顔が真っ赤になっていることが分かる。


「声だけで感じたのですか?相変わらずイヤラシイ人です…まぁ、今回は仕方が無いかもしれませんねぇ。今回の任務で1ヶ月も離れていたんですから、ね?」


クスクス笑う骸に綱吉は顔を赤く染めたまま、いじけたように言った。


「たった1ヶ月だろ…本当はまだ長引く予定だったのに…無理しただろ、骸?」


「無理なんてしてませんよ。僕の事は一番君が知っているでしょう?それに…愛しい綱吉くんに早く会いたかったんです。長い間離れていて君に触れることが出来ないなんて狂いそうですよ」


そこまで言うと、骸は綱吉の顎を掴んで無理矢理自分の方に顔を向かせる。


「…綱吉くん、今日が何の日か知ってますか?」


久々に間近で見た恋人の顔に思わず見とれてしまった綱吉。


「…そんな顔をして、誘っているんですか?」


「////!?〜〜〜っ、馬鹿っ!!!!!」


骸の言葉に正気に戻った綱吉は途端に顔を真っ赤にさせて、骸を突き飛ばして離れる。


「クフフ…全く君はいつも素直じゃありませんねぇ…」


「煩いっ////!!!!!お前恥ずかしいんだよ////!!!!!………ったく…で?お前何が欲しいんだよ?」


小さく笑うのを止めない骸を赤い顔で睨みながら綱吉が問いかけると、骸は何を言われたのか理解出来なかったみたいできょとんとしている。


「…なんて顔してんだよ…聞こえなかったのか?お前何が欲しいんだって聞いたんだよ………今日お前、誕生日だろ?」


綱吉の言葉に綺麗に笑う骸。


「覚えていてくれたんですね」


「まぁ、な…仮にも…こ…こ、こ…〜〜〜っこっ恋人だしな…っ////」


先程よりも更に顔を真っ赤に染めて、骸から顔を逸らす綱吉に骸は珍しく嬉しそうに小さく笑うが綱吉は顔を逸らしていたため気付いていない。


「欲しいもの、ですか…もう僕の欲しいものは手に入ってしまいましたから無いんですよねぇ…」


「え?それって…」


骸の言葉に思わず綱吉が振り向くと、優しい笑みでこちらを見ている骸がいた。

「分かりませんか?…君はこういう事にはとても鈍感ですよねぇ…綱吉くん、君ですよ。君が僕の側に居てくれたら他には何もいりません」


「…っ…また…恥ずかしい事をぺらぺらとっ…それにっ////!!!!!俺がお前といるのは、あ、当たり前で…俺も、お前と居たいから…その…////」


少し俯いて恥ずかしそうに、だけどはっきりと言う綱吉に思わず抱きしめる骸。

驚いて骸の顔を見上げた綱吉は思わずどきっとしてしまう。
今まで見たことの無い骸の嬉しそうに、愛しそうに、綺麗に笑う笑顔だったから。


「…ありがとうございます…今までで一番嬉しいですよ。君は滅多にそんな事言ってくれませんから…最高のプレゼントですね」


「………っ」


「?綱吉くん?どうし…!?」


骸の腕の中で突然俯いた綱吉に、心配した骸は声をかけた…次の瞬間。
綱吉は骸の首に抱きついた途端に骸の唇に触れた柔らかな、暖かい感触と耳元で囁かれた…普段は絶対に言われない言葉。


「またには良いだろっ////!?プレゼント俺が良いなんて言われたら仕事出来ないからそれがプレゼントな////!!!!!…でも俺以外ならプレゼント何でも良いから考えとけよっいつも俺ばかりが貰ってばっかだと癪だから////!!!!!」


いつの間にか、固まった骸の腕の中から逃げ出した綱吉は既に遠くに居る。
その場所から骸を振り返り、顔をほんのり朱く染めて指をびしっと指しながら言うと執務室へ走って行く綱吉。


残された骸は暫く呆然としていたが、ゆっくりと指で自分の唇に触れる。
心なしか口許が緩んでいた。
そしてゆっくりと瞳を閉じて彼の、綱吉の属性“大空”のような言葉を思い出す。

























“誕生日おめでとう…生まれて来てくれて、俺の側に居てくれてありがとうな”
“いつまでも…愛してる”










END
→あとがき
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ