詩
□クリスマスプレゼント
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「サンタが来たのっっ!!!」
そう言うなり飛び付いてきた彼女の勢いの良さに、僕は押し倒されそうだった。
「君の歳になってもサンタが来るんだね」
「どういう意味よ」
鋭く睨んだ彼女の瞳だったが、抱えたプレゼントを見てすぐにその瞳は緩んだ。
「何をくれたんだい?サンタは」
今年で23歳になる僕の彼女を、優しく撫でる。
「わからない。なんだろ?」
いくつになっても無邪気な君。
このわくわくした笑顔が見たくて、サンタも毎年プレゼントを枕元に置くのだろう。
「わぁぁ」
キラキラの目と同じような輝く声で歓声をあげる君。箱から取り出したのは、彼女にとても似合いそうなコートだった。
ココア色の温かみのある色合い。
裾や袖口には上品にクリーム色のレースがあしらわれている。
丸くカットされている襟元がかわいらしい。
左胸にはさりげない猫のブローチ。
「着てごらん」
背中を鏡の方に押すと、少し離れた場所にある姿見の前まで彼女は走っていった。
「どう?」
鏡の前でコートを翻しながらくるくると回ってみせる。
うん。サイズもぴったりだ。
何より色がいい。
彼女の白い肌を優しい茶色がキレイに包んでいる。
そう、チョコレートケーキのようだ。
さすがサンタ。センスがいい。
「どうなのー?」
黙って僕が君を見ていたからすぐに感想の催促が飛んできた。
「かわいいよ」
「ありきたりねー」
なんて皮肉を言いながらもかわいいと言われて上機嫌のようだ。
パジャマの上から羽織ったコートを表と裏、前と後ろ、鏡の前で十分に眺めながら、踊っている。
「素敵ね」
「あぁ、よく似合ってるよ」
「サンタってあたしの好きなものよく知ってるのね。チョコレートケーキみたい」
そう言うと思ってた。
なんて内心笑いながら鏡の前に立つ彼女の後ろに立つ。
鏡の中で二人の目が合った。
「チョコレートケーキなら、食べてもいいかな?」
後ろから抱きしめると、赤くなった顔を隠そうとしている君が、
「ちょっとだけならね」
と言った。
「ありがと。あたしのサンタさん」
鏡に映る二人の唇が触れ合った、クリスマスの朝。