+ gintoki × hijikata +
□「君が好き」
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*茶会企画小説*
W保育士/銀→←土/モテモテにヤキモチ
***
「君が好き」
夕暮れ時になると迎えを待つ園児の数も少なくなり、おなじみのメンバーが顔をそろえた。
仕事が忙しくてすぐに迎えに来れない親や家族は、どうしてもこの時間帯の迎えになってしまうため、迎えを待つ園児も大体決まってくる。
特に神楽と総悟は最後まで残って待っていることが多い。
その待ち時間も当然、神楽と総悟が退屈しないように一緒に遊んであげるのだが…
…どうしてこんな元気かねェ…
今日一日外で遊び回ったにも関わらず、二人とも疲れた様子などは全くない。
それどころかもっと遊べと足にしがみついて来たり、背中にぶら下がったりとアクティブな動きでいつものように俺を……ボロボロにした。
「…君たち手加減ってものを覚えなさい…センセー体がもちません」
うつ伏せにぶっ倒れている銀時の上に、総悟と神楽が馬乗りになってブーイングを浴びせる。
まだ遊び足りないとばかりに背中をバンバン叩かれてうめき声が腹から押し出された。
…こういうときだけムカつくほど息ぴったりだな、おい。
「ギンちゃんおじさんネ。そんなだからカノジョもできないアル」
「だんな…このぐらいでバテてたら、マヨラーおしたおすことなんてできやせんぜ?」
「オメェらが俺をサンドバックにするからだろがァァァ!!!って、ちょっと二人とも何銀さんの恋愛事情心配してんのォォ?!特に総悟くんっ!!そんなこと口にしちゃいけません!!!」
いつもながらこの二人は勘がいいというか、凄いところから突っ込んでくるというか…
総悟なんて、どこで覚えてきたんだ!と思わずツッコミたくなるようなセリフがバンバン出てくる。
何気に俺の気持ちにも気付いてるっぽいんだよな…こいつホントに幼稚園児か?
「おい、何騒いでる」
ギャーギャー取っ組み合いに近いやり取りをしながら見上げると、部屋の入り口に土方が立っていた。
腕を組んで仁王立ちする姿に、神楽も総悟も一瞬大人しくなり土方を見上げる。
「迎えの時間だ。ほら、神楽も総悟も帰る支度しろ」
途端に神楽と総悟の顔がパァッと明るくなり、バタバタと走りながら帽子とカバンを取りに向かった。
そしてものの数秒もしないうちにきちんと帰り支度を済ませ、玄関に一直線。
ああゆうところは子供らしんだけどな。
そんなことを考えて苦笑いしていると、お前も早く来い、と土方に言われようやく重い体を起こした。
さっき暴れたせいでズキズキする腕やら腰やらを少し動かし、思いっきり伸びをする。
よし、と気合いを入れ直して、土方の後ろに続き玄関へと足を運んだ。
***
まぁ、気合いを入れたのは“あれ”に耐えるためなんだけど…
神楽と一緒に迎えを待つ俺の斜め前では、楽しそうに談笑する土方と…総悟の姉、ミツバの姿。
可愛らしい頬笑みで土方に話しかけるミツバに、優しい笑顔で応える土方はいつも通りカッコよかった。
どっからどうみてもお似合いのカップルにしか見えない…それが俺をイラつかせた。
「今日は総悟の迎えの方が早かったなー」
「うん。パピー、きょうはちょっとおそいアル」
そんな他愛もない話で気を紛らわせ、神楽と手を繋ぎながら門の方に視線を移した。
元々土方は容姿も良いし、あまり愛想はないが親切な振る舞いが紳士的なため、土方に見惚れる親も少なくない。
土方目当てでこの保育園に子供を移そうとする親まで居たのには正直、かなり驚いた。
そんな土方を今独占してるのはミツバで…
ただでさえ他の人に囲まれる土方を見るのが嫌なのに、二人っきりで会話している姿なんて見るに堪えない。
それでも、土方は仕事をしているだけなのだと自分に言い聞かせて気持ちを押し殺した。
ぎゅっ…
不意に、握っていた神楽の手に力がこもった。
「?…神楽?どうし―…」
「さよなライダーキーック!!!」
「ぬおっ?!!」
神楽に話しかけようとした瞬間、背中にガンッと衝撃を感じて思わず変な声が出た。
「…ッテー…ちょ、総悟くん?!普通にさよならのあいさつぐらいしようねっ!!先生痛いし!!」
「ふん、しけたツラしてるのがワリィんでさァ」
え…
思わず呆気にとられていた俺の手を、神楽がクイクイと引っ張って来た。
目線を合わせるようにしゃがめば、心配そうな大きな瞳がじっと見つめてくる。
「ぎんちゃん、アメあげるからげんき出すアル」
そう言って神楽が差し出した手には小さな飴玉の包み。
あの神楽が食べ物を分けてくれるなんてよっぽどのことで…
ああそうか…と一人で納得してしまった。
平気な顔をしていたつもりが、どうやら子供にも分かるほど相当つまらない顔をしていたらしい。
まったく…俺は隠し事は得意な方だと思ってたんだけど。
「サンキュ、神楽。とりあえず…銀さん頑張るわ」
その言葉の本来の意図をきっと神楽は理解していないが、俺が笑いかけると安心したように笑顔になって迎えに来たパピーの元へ駆けて行った。
総悟は俺の頭をペシッと叩くと「しっかりやりなせェ」なんて言葉を残して姉の元へ…
幼稚園児に励まされてしまった…などと軽く凹みながらも、小さな飴玉に勇気づけられてクスッと笑みが零れた。
銀時はアメをポケットに入れると、また話し込んでいる土方の横を通り抜けて園内へと戻っていった。
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