+ gintoki × hijikata +
□「視線の先」
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「…ん?」
目を覚ますと視界は真っ暗。
…俺、は…寝ちまってたのか…
土方は重い体を起こし、湿った前髪を掻きあげた。
全身がダルい。
うまく働かない脳でボンヤリしながらふと横を見ると、そこにはスヤスヤと気持ちよさそうに眠る銀時がいた。
まだ、いたのか…
眠る銀時の寝顔を見ながらじんわり胸が熱くなるのを感じた。
俺が起きている気配に気付いたのか、もぞもぞと動き始めた銀時に、あ…起こしてしまった、と少し申し訳なくなる。
眠そうに目をこすりながら、こちらを向いた銀時と目が合う。
そしてフワッと笑うと、無言で土方の頬に触れ身を乗り出すようにして顔を近づけてきた。
あまりの近さに驚き、咄嗟に後ろに身を引いくも、銀時の手が首の後ろに回りそれを許さなかった。
そのままグイッと引っ張られ…
コツンッ
額と額が触れ合った。
そっと額を離した銀時はフッと笑うと土方の髪を優しく梳いた。
その手がくすぐったくて…心地いい…
「熱はだいぶ下がったみてぇだけど、まだ熱いな。もう少し横になってろ」
「……ん」
「…今の土方、素直で可愛いのな」
クスッという笑い声と一緒にふざけた言葉が鼓膜を揺する。
いつもなら即言い返して抜刀しているところだが…今はなぜか素直に受け入れてしまっている。
反論の言葉一つ浮かんでこない。
それに…
さっきよりも体が熱い…
…きっと風邪のせいだ。
触れてくれている手を離さないでほしいと思ってしまっているのも、きっと風邪のせい。
土方は再び布団に入ると、ギュッと白い着物の袖を握り締め枕に顔を埋めた。
…今は、傍にいて欲しい。
小さな子供のような自分の行動に、自分でも呆れる。
そんな俺を咎めるわけでもなく、銀時は着物を握り締めた手を覆うように握ってくれた。
その温もりにもっと触れたくて…
ゆっくり開いた手のひらに銀時の手のひらが合わさって、指が絡まる。
ギュッと握り合った手の温もりから銀時の優しさも伝わってくるような気がする。
その手を見つめながら嬉しそうに笑う銀時を視界に捉え、また意識が沈んでいった。
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