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□「サンタな銀さん」
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クリスマスフリー小説(銀土)

フリー期間:〜12/31まで


(配布は終了いたしました。)



***





「サンタな銀さん」





『ワリィ…今日行けなくなった。』


そんな電話をもらったのが昨日のこと。
仕事が入るかもしれない、とは聞いていたが、まさか本当に仕事が入ってしまうとは…
せっかく土方と二人っきりで過ごす予定だったのに、ダメになってしまった。


結構楽しみにしてたんだけど…仕方ねェよな。


銀時は口にくわえたフォークを歯でカチカチいわせながら、カレンダーを見た。
12月25日に大きな“はなまる”。
まるでサンタからプレゼントをもらう子供のように待ち遠しかった日。


…でも、十四郎がいないんじゃ、意味がない。


こうやって大好きなケーキを目の前にしていても、考えるのは土方のことばかり。


「今…何してんだろ。もうさすがに仕事は終わってるよな、この時間。あっ、そしたら電話かけてくるか。…いや、もう疲れて寝ちまってる?」


誰に問いかけるでもなく、一人でブツブツ独り言を呟いてみた。

…なんとなく、寂しくて。

土方に会えない。
その事実が、胸をぎゅっと締め付けた。
別に今日無理やり会わなくても問題なんてない。
次の日にだって会える。

けどやっぱり、クリスマスは大事な人と過ごしたい。


って思うのが、人間だろ?
ってあれ?俺なんか乙女発想になってない?


「あーもう!!サンタさん!!俺に十四郎プレゼントして下さいっ!!!」


天を仰ぎ懇願してみるが、シーンと静まり返った部屋には銀時の声が響くだけ。
銀時はため息をつき、机の上のケーキに目をやった。
食べかけのショートケーキの横には、土方が食べるはずだったショートケーキが置いてある。

せめてこれだけでも届けられたら―…


「あっ、そっか。俺がサンタになればいいんじゃん。」


銀時は勢いよく立ちあがるとケーキを箱に詰め、急いで羽織をはおった。
そのまま一秒でも早く土方の元へ向かおうと、玄関の戸をガラリと開けた。


「うっわー…すげー雪。」


締め切った部屋の中では気付かなかった雪の量に驚き、ついでその綺麗な景色に思わず見とれてしまった。


十四郎もこの景色、見てんのかな…


そう思うとますます会いたくなって…

銀時は傘をさすと真っ白な雪の中をザクザクと進んでいった。



***



微かに聞こえる、この声は…銀の声。

いつもはふざけてばかりいる声も、俺の名前を呼ぶ時は優しくなる。



…そう言えば、今日は銀の声聞いてねェな。

電話、してーけど……できねェ。

自分の都合でせっかくの約束をダメにしてしまった。
きっと銀は優しいから「いいよ」って言ってくれるけど、ずっとこの日を楽しみにしていたんだと思う。
だって俺だって、銀と過ごせるこの日を楽しみにしてたんだから…

そう思うと申し訳なさ過ぎて、何をどう話していいかもわからない。
それでも、銀のいない寂しさは募るばかりで…


…銀の声、聞きてェな。


「……十四郎。」


そう、こんな風に銀時が優しく俺の名前を呼ぶんだ。
俺が振り返れば、嬉しそうな笑顔を返してくれる。


「…十四郎、起きて。」

「……ん。」


あれ…?銀、の声?


土方は目を擦りながら、重い体を起こした。


俺、寝ちまってたのか…?


どうやら書類を片付けながら、いつの間にか寝てしまっていたらしい。

…と、思ったのも束の間。
隣から聞こえてきた声にボーッとしていた頭は一気に冴えた。


「ごめんな。せっかく寝てんの起こして。」

「!!…銀時っ!?」

「メリークリスマス。銀髪サンタさんがケーキを届けに来ましたよー」


ほ、本物だよな?!夢の続きとかじゃないよな?!
だって会いたいって思ってたら、本当に今、目の前に銀時が現れて…夢みてぇな現実。


土方は自分の頬っぺたをつねってみる。
うん。痛い。


「ぶはっ!!なーに可愛いことやってんの?夢かと思った?」


嬉しそうに笑いながら俺の頬をつんつん突いてくる銀時。
あ、やっぱり現実なんだ、と妙に納得して…それから安心した。

銀時に会えた。

それだけで胸がいっぱいになって…
気づけば、銀時に思いっきり抱きついていた。
そんな俺の髪の毛を優しく梳きながら、銀時は少しすまなそうに話を始めた。


「今日さ、どーしても十四郎に会いたくて…会いに来ちゃった。」


いきなり来てごめんね。と言って前髪にキスをする銀時にトクンと胸が高鳴る。
いきなり来て悪いだなんて…そんなことあるわけがない。
むしろ嬉しすぎて、それをどう表現していいのかもわからない状態だ。

でもどうにかしてそれを伝えたくて…
土方は銀時に抱きついたまま、首をブンブンと横に振った。

銀時はそれを見て嬉しそうに笑うと、土方をさらにギュッと抱き寄せ、耳元で囁いた。


「十四郎がいなくて、寂しかった。」


切なそうに、そして少し安心したような声色がなんだか嬉しい。
土方は銀時の背中に腕をまわすと、顔を上げ、銀時の目を見つめた。


「…俺も、寂しかった。」


合わさった視線を逸らすことなく絡めたまま、引き寄せあうように唇を重ねた。
ついばむようなキスから、甘く深いキスへ…

キスを終えたあとには、さっきまで感じていた不安だとか、寂しさだとか…そんなものは全部どこかに吹き飛んでいた。


「そうだ!本当は今日のデートでプレゼント買う予定だったんだけど、行けなくなっちゃったから…何か欲しいものあったら言って。今度用意しておくからさ。」


あっ。銀時も俺と同じこと、考えてたんだ。

と思うと同時に、“欲しいもの”なんて一つしか思い浮かばなかった。


「…銀。」

「ん?なに?」

「だから、銀。…銀の明日一日、俺に頂戴。」


その言葉の意味を一瞬理解できなかった銀時だが、みるみる顔を真っ赤にして、しどろもどろになった。


「ちょ、ちょっと待って!やばいっ、今の凄くキュンときたっ!!あーもう、どうしてそういうこと言うかなー…銀さんの心臓壊す気かコノヤロー」

「な、なに赤くなってんだよっ?!こっちまで恥ずかしくなるだろがァァ!!!」

「嬉しんだから仕方ねェだろ?ってかさ、明日一日と言わずに、今この瞬間から俺は十四郎のものでも構わないけど?」

「!!」


楽しそうに口の端をつり上げ聞いてくる銀時に、“NO”なんて言えるはずがない。
だって、少しでも長く銀時と居たいと思っているから…


「サンタのプレゼント、喜んでくれると嬉しんだけど…いかがかな?」


そりゃーむちゃくちゃ嬉しいけど、素直に返事をするのも…なんか悔しい。
自分ばかり子供扱いされてるような気分だ。


「銀は何か欲しいもの、ねェのかよ。」


ちょっと話を逸らしてやろうと思って問いかけてみたのに…


「ん?俺?そんなの、十四郎に決まってんじゃん。」


…あーくそっ…やっぱ、敵わない。


真っ赤になった顔を隠すように銀時にしがみつけば、十四郎、と優しく呼ばれた。
おずおずと顔を上げると頬を両手で包まれ、優しいキスをもらった。


「今から俺は十四郎のものだから、して欲しいこと何でも言っていいよ?」

「…じゃあ、キス…して。」

「喜んで。」


そう言って銀時は唇を重ねた。
でもすぐ唇は離れて…
次に感じたのは、首に走るツキンとした痛み。


「っん…!」


銀時の唇は首元から離れると、ペロッと下唇を舐めた。


「十四郎も銀さんのもの、でしょ?それはその印。」


キスマークがついたところをそっと指で撫でられ、ゾクッと体が震える。
そんな銀時の独占欲も嬉しくて…
銀色の髪の毛をつまみ軽く引っ張れば、艶っぽい瞳がこちらを見る。


「……銀。」

「ん、今日は銀さんでいっぱいに満たしてあげるね?」


それにコクコクと頷く土方に、可愛い、と銀時が囁く。


あー…どうしよう。
最高のクリスマスだ。

深い口づけをしながら、愛する人と過ごせる時間を愛おしく思った。





end


→あとがき
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