+ Parallel +

□1
1ページ/7ページ



第一話「迷い猫」





「ナァー…」

「?」


下校中、銀時は聞き慣れない音にふと足を止めた。
あたりをキョロキョロと見渡すが、なんの変哲もないただの寒い冬の公園。


「ナァー!」


さっきよりもはっきり聞こえた音は、どうやら猫の鳴き声らしい。

いったいどこから…

銀時があたりを探してみると、ベンチとゴミ箱の狭い隙間に黒い子猫がいた。


「ニャ。」

「おチビさん、そんな隙間で何してんの?」


銀時は子猫を隙間から出してやろうと手を伸ばした。




ガリッ




「っ!…ってー。いきなり攻撃?!」


手を思いっきり引っかかれて、眉をひそめる銀時。
子猫はフーッと毛を逆立ててひどく興奮している。
銀時は不思議に思い、黒猫をじっと見つめる。
そして後ろ足に目がとまった。


こいつ、怪我してる。


野犬にでも襲われたのだろうか。
こんなに怯えて。
このくらいの子猫なら、まだ親と行動を共にしている時期のはず。
親が…いないのか?

いまだに銀時に警戒心むき出しの子猫。

そんな姿が子供の頃の自分と似ていて…


銀時は再び手を伸ばした。
また引っ掻かれたが気にせず子猫に触れ、隙間から引っ張り出す。
いやいやと暴れる子猫を抱きかかえるが、子猫も逃げようと必死だ。

銀時は首に巻いていたマフラーを取ると、子猫にふわりと巻きつけた。
それでも暴れる子猫だったが、マフラーの温かさに気を良くしたのか、徐々に落着きを取り戻した。


ふぅ、やれやれ。
…とりあえず、オンボロアパートに連れて帰るか。


銀時は首元に当たる冷たい風に身震いしながらアパートへ向かった。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ