+ gintoki × hijikata +

□「視線の先」
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なぁ…

お前の視線の先には誰がいる?





 「視線の先」





まっ昼間、屯所の一室で大きな怒鳴り声が響き渡った。


「だーかーら…なんでお前が此処にいんだよ!!」

「んだよ、うるせーな。小さいことでウダウダ言ってっと飼ってる金魚も大きくなんないよ?あれだよ?鯉になっちゃうよー多串くん」

「なんで鯉になんだよっ!てか、多串じゃねェーつってんだろ!!」


人の自室で寝転び、大欠伸をしながらふざけた返事をする銀時に苛立ちが増す。
ただでさえ今は、屯所内で問題が発生して大忙しだと言うのに…


…何でこいつが此処に居やがるっ


土方はドカッと胡坐をかいてその場に座ると、イライラしながら煙草に火をつけた。
が、すかさずそれを横からヒョイッと取り上げられすぐ火を消されてしまった。



「ちょっとお客さん、ここ禁煙なんですけどー。これだから最近の警察は弛んでるって言われんだよ、まったく」

「誰がお客だ…此処は俺の部屋だろうがァ!何でテメェの部屋見てーな顔してんだよ!」


一服しに来たってのに、全然休めやしねェ。
…あークソッ、こいつと言い合ってたら喉が痛くなってきやがった…


痛み出した喉に手を当て眉をひそめると、それに気づいた銀時が土方の顔を覗き込んできた。
その近さに思わず心臓がドキッと跳ねる。


「何、喉痛いの?もしかしてもうインフル移されちゃったとか?」

「あァ?なんでテメーがそれ知ってんだ」


そう…実は今、屯所内でインフルエンザ患者が続出中。
次々高熱を出して倒れる隊士の看病に追われ、屯所内は騒然となっていた。
しかも、看病していた隊士までもが感染して患者は増える一方…


「…知ってんなら、何で来た?移るだろ」


土方が当たり前の疑問を投げかければ、やれやれとため息交じりで答えを返された。


「お宅のゴリラに『看病する人手が足りないから助けてくれー!』って依頼がきたから、こうしてわざわざむさ苦しい屯所に来たんですー」


その然も、来てやった、と言わんばかりの態度に土方が睨みをきかすが、当の本人には全く効果なし。
しかもこちらから依頼しているとあってこれ以上文句は言えない。


…近藤さんが頼んだんじゃー仕方ねぇ。
…ん?こいつが来てるってことは―…


「おい。まさか、お前ん所のガキ2人も一緒じゃねぇだろうな?」

「そりゃー従業員ですから。新八は料理、神楽は掃除、銀さんは看病係って役割分担。予防接種もちゃーんと受けてるし大丈夫でしょ」

「…そうか」


インフルエンザが移る心配はないようだが…あのガキ達にまかせても大丈夫なのか?
逆に仕事が増えそうな予感がするが…
ったく、問題が多すぎて頭痛がして来やがった。


「看病係か。じゃあ、俺の部屋に居る理由はねぇな。さっさと手伝いに行きやがれ」


そう言って仕事に戻ろうと立ち上がった土方の腕を、銀時がグイッと引っ張った。
急に体を引き戻されたせいでバランスを崩し、畳の上にドサリと尻餅をつく。


「…テメー何しやがる」

「言ったでしょ。銀さんは看病係って」

「は?だから―…」


土方の言葉を無視して、銀時は土方の額に手を添える。
少しひんやりした掌が気持ちがいい。


「やっぱり…熱あるな」


へ?ねつ…?

土方は言われた言葉の意味を少し遅れて理解し、納得する。
どうやら自分もインフルエンザを移されてしまっていたようだ。
疲れからきたダルさだと思っていたが…熱が原因だったらしい。
ボーっとする意識の中、額に手を添えたままの銀時にチラリと視線を向けた。


「…その顔、やめて欲しいんだけど」


? どんなカオを?

銀時は抑えがどうとか、自信がどうとか、ひとりでブツブツ呟いている。
それを横目で見ながら土方は意識を手放した。






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