+ gintoki × hijikata +

□「桜の木の下で」
1ページ/7ページ



「桜の木の下で」





放課後の教室。
中庭を眺める、一人の生徒がいた。


「土方。まだ帰らねェの?」


外を眺めていた土方は、声の発せられた方へ体を向けた。


「…先生。」


そこには銀八がいた。
廊下側の窓から身を乗り出し、ヒラヒラと手を振って時計を指差す。


「そろそろ教室閉めっから、帰る支度しろよー。」

「…はい。」

「・・・。」


土方は、短く返事をすると窓を閉め始める。

その背中に銀八は問いかけた。


「…なぁ、なんかあった?元気ねェみてーだけど。」

「・・・。」


しかし、土方は無言のままで立ち尽くしている。
シンと静まり返った教室が嫌な雰囲気を創りだす。
何か他の話題を――と考えていた銀八の思考を遮ったのは土方だった。


「…先生は“ジンクス”って信じますか?」

「はぇ?」


突然質問され、間抜けな声を出してしまった。
それをごまかすように咳を一つして、腕を組む。


「ジンクスねぇ…。」

「この学校には、中庭の桜の木の下で告白をすると結ばれるってジンクスがあるらしいです。」

「へぇ、そんなもんあったの?うちの学校。」


そう言いながら銀八は土方の横へ行き、中庭に目を落とす。
中央に一本だけ、桜の木が立っていた。
今の時期が丁度見ごろで、綺麗な花を咲かせて風に揺れている。


「先生は信じますか?」

「ジンクス?」


土方はコクリと頷き、銀八を見据える。
銀八は頭をガシガシ掻くと少し考え、答えた。


「…俺は信じねェな。どこで告ろうが、くっつく奴はくっつくし、振られる奴は振られる。
 まージンクスなんて、後押しにすぎねェよ。

 やっぱ大事なのは、“お互いの心”だろ?」


銀八の話を聞いていた土方は、何か吹っ切れたような顔をすると、再び中庭の桜を見る。


「先生、有難うございました。じゃ、俺帰りま… 」



ガシッ



!!



銀八はその場を去ろうとする土方の後ろから首にしがみつく。


「ちょっと待ちなさい。結局何で落ち込んでたわけ?話が全然見えないんですけどー。」

「…なんでもない…です。」

「えー言い方がなんでもなくな―」

「何でもないです!!」


顔を真っ赤にしてそう言うと、銀八の腕を振りほどき一目散に教室を後にした。


今の反応、可愛かったなぁ…ってそうじゃなくて。
何だったんだ?あいつ…?


疑問を残しつつも、銀八は戸締りを終え、職員室へと戻った。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ