+ gintoki × hijikata +

□「その声でこの名を…」
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「その声でこの名を…」





空は晴天。
気温もサイコー。
こんな日は茶屋の団子を食べながら、のーんびりするのが一番だな。


銀時は茶屋の長椅子に座り、大口を開けて団子を頬張った。


んーやっぱり、うめぇなぁー
ここに土方がいたらもっとサイコーなんだけど。


そんなことを考えながら二本目の団子を手にし、口に運ぼうとした、その時…



「テメェェェエエエ!!!待ちやがれェェ!!!」



大きな怒鳴り声が辺りに響き渡った。


あの声は…


今しがた自分が会いたいと思っていた相手の声。
だがそれは想像していたよりもはるかに怒りに満ちていて…

咄嗟に立ち上がった銀時の目の前に飛び込んできたのは、全速力で走ってくるおっさん。
その手には、明らかに女物のバックが握られていた。


あぁ…そういうこと。


銀時はスッと左腕を横にあげると走ってくるおっさんの前にかざした。
後ろばかりに気を取られているおっさんは、前方にいる銀時のことなどまったく気づかずそのまま突っ込んできて…



ドガァッ!!ゴン!!



見事なラリアットを食らい、地面に頭を思いっきり強打。
凄まじい音を立てて倒れたおっさんは、完全に伸びてしまっていた。


「あらら?ここまでするつもりなかったんだけど…」


やりすぎたな…と頭を掻きながら呟く銀時の元へ駆けつけた人物は、銀時の姿を見て驚いたように目を見開いた。


「ハァ、ハァ…万事屋?なんでここに…てか、それ」


息を切らしながら銀時と伸びたおっさんを交互に見やり“お前がやったのか?”と視線が問いかけてくる。


「ん?追いかけてたから、捕まえた方がいいのかな〜って思って?あっ、伸びてんのは不可抗力だから。俺のせいじゃないから」


“それ”と称された伸びきったおっさんを指差しながら、あくまで捕まえただけ、と弁解しつつ息を切らす土方に目をやった。


肩で息を整えながら首元を少し緩める姿が妙に色っぽい。
紅潮した頬にしっとりと汗ばんだ前髪…
仕事で汗水流して働いてる土方には悪いが、思わずエロい妄想に突っ走りそうになった。


…って、何考えてんの、俺。


そんな銀時の心も露知らず、土方は淡々と話を進めた。


「そいつひったくり犯。ばあさんのカバンとって逃げやがった。それより…総悟っ!!!」

「なんですかィ、チンタラ走って旦那に手柄取られた土方さん」

「そりゃ、オメェのせいだろうがァァ!車に乗っててなんで俺と並んで走ってんだよ!!」


怒りの矛先はおっさんからパトカーの助手席に座る沖田に変わったものの…
怒られている当の本人は何食わぬ顔で平然と口答えをしている。
いつもと変わらない二人のやり取りに思わず苦笑いが零れた。


「トレーナーがランナーについて走るのは常識でさァ」

「車に乗ったトレーナーほど腹立つもんもねぇだろよ、いいからとっとと―…」


手伝え、…そう土方が言い終わる前に後ろから抱きついた。
驚いてビクッと震える体がなんだか可愛い。


「とっとと、おっさん連れて屯所に帰りなさい、ドS王子君。当たり前だけど多串君は置いて帰ってね?」


話の腰を折り、沖田に当てつけるように土方をギュっと抱き寄せれば、鋭い眼光が刺すように見つめ返してきた。
まさに一触即発。
おそらく、この状況が飲み込めていないのは土方だけだろう。


「はァ?!ちょっ―…」

「…じゃあ旦那が一緒に来てくださェ。犯人逮捕に協力した市民として表彰しやすんで」

「おい、なに勝手に…」

「とか何とかいっちゃって。打ち首にする気満々だろがコノヤロー」

「話を…」

「さすが旦那、ご名答でさァ。なんなら今ここで首落としてもいいんですけどねィ?」


やはり一歩も引く気のない沖田は、銀時を挑発するような言葉で反撃してくる。
が、こちらもそうそう言われっぱなしではいられない。
やれるもんならやってみろ、そう口にする前に…


土方がキレた。


「ダァァァァアア!!!…テメェら、人を無視して話進めてんじゃねェ!!オメェもさっさと離れろ!!」


二人の間でシカトされ続けた土方は大きな怒声と共に、銀時の脇腹にエルボーを決めた。


「うごっ!!」


思わぬ攻撃にさすがの銀時も脇腹を押えながら小さく呻く。

今のは、結構効いた…


「って…今のひどくね?!」

「知るかっ!離れねーテメェが悪ぃんだろうが!!」


そんな二人のやり取りを横目に、沖田はひったくり犯を車の後部座席に放り込むと、呆れた顔でため息をつきながら再びパトカーへと乗車した。


「へいへい、邪魔者はさっさと退散しまさァ。旦那ァ、うちの大事な一人息子、ちゃんと送りとどけないと承知しやせんぜ?」


その言葉に一瞬驚くも、含まれた意味合いが少なからず土方を俺に任せてくれるというものであったことに変な安心感を覚え、小さく口元を緩めた。


「息子さんは命に代えても守って見せます」

「じゃ、そういことで」

「オイィィィ!!何の話だァ?!てか、誰が一人息子だコノヤロ…って総悟!!!」


土方が文句を言い終わる前に、沖田はパトカーを走らせその場から立ち去ってしまった。






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