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□「Silver ring」
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*土方ハピバ小説*

2009/5/5


***



「Silver ring」





只今、夜中の11時53分。



筆を片手に時計を見た土方は小さくため息をついた。


この調子じゃ、明日もあいつに会いに行く時間はとれそうもないな…


ここのところ仕事が忙しく、銀時に会いに行くどころか電話もなかなかできない状況だった。
今日も書類の片付けに追われ、夜中まで自室で一人、書類と睨めっこだ。
一日中やっているものだから、疲れも堪りイライラしてくる。


…こんな時、あいつの声が聞きたくなんだよな…


携帯を広げ、『坂田銀時』の番号を画面に表示する。
もちろん、名前を出すだけ。
本当は今すぐ電話をかけて声を聞きたい…が、今は真夜中。
仕方なく携帯をパタンと閉じ、そして何度目かのため息をついた。


「なーにため息なんてついてんの?」


その声に驚いて振り返ると、いつの間にか部屋の入口に銀時が立っていた。


「銀…なんで…」

「んー?それは、十四郎に一番に言いたいことがあったから」


?…言いたい?何を?


首を傾げて眉間に皺を寄せる土方を見て、銀時はクスクス笑うとカウントダウンを始めた。


「…3、…2、…1、…0!!十四郎、誕生日おめでとー」


そう言って思い切り抱きつかれ一瞬、思考が停止する。
だがその言葉の意味を理解して思わず泣きそうになった。


そうか、明日…というか、もう今日か。



…俺の誕生日。



仕事の忙しさと、銀時と会う時間を作るのに必死で、誕生日のことなどすっかり忘れていた。


「忘れてました、て顔だなぁーせっかく銀さんが会いに来たのに。本人が忘れてるってどうなのよ?一人で盛り上がって若干寂しい感じじゃん、この状況」


土方の考えていることを的確に当て、文句を言う銀時に…なんだか笑いが込み上げてきた。


「知るか。ところでひとつ疑問なんだが…」

「?」

「俺が起きてなかったらどうするつもりだった?」


なんとなく予想はつくが…今のおれは機嫌が良くて寛大だ。
一応話を聞いてやろうじゃないか。


「布団に侵入して、朝起きたらビックリ!愛しの銀さんが!ってサプライズを決行しようかと………えっ、ちょ、何片手にもってんのォォ!!ば、抜刀はやめようね?ね?」

「俺の唯一の安らぎの眠りを邪魔したいのか、それとも俺を朝っぱらからキレさせたいのか、どっちだ?あァ?」


予想通りだったが、その茶化すような言い方にムカッときて刀を手に取り銀時ににじり寄ろうとした刹那、



首元で何かが音を立てて揺れた。



咄嗟に触れれば、首にぶら下がる細い鎖の感触。
その先には丸い輪っか…
それを手のひらに乗せれば、銀色の綺麗な指輪がキラリと光った。


「それ…誕生日プレゼント。ちなみに俺の名前入り」


銀時はそう言ってニッと笑うと、自分の左手を土方に向けて広げて見せた。
その薬指には、今自分の手元にある指輪と同じ形の銀色の指輪。


「で、こっちにはもちろん十四郎の名前入りな」


ブワッと湧き上がった感情は純粋な喜びだった。
誕生日プレゼントなんて貰って喜ぶ歳でもないが、それは紛れもない銀時が俺を想って買ってくれた形。
それが本当に嬉しくて…
口元が緩んでしまうのをどうにか我慢しようと口を一文字に結んだ。


…なんで、なんでこいつは、俺を喜ばす方法熟知してんだよっ…


そんなことを考えている自分に恥ずかしくなりながらもチラリと銀時に目をやれば、嬉しそうに笑いかけられて…
…不覚にもトキめいてしまった。
それを紛らわせようと咄嗟に嫌味を口にしていた。


「ベタ過ぎんだろ?どこぞのバカプッルか」

「えーいいじゃねェか。女よけにもなるし?」

「………女よけつけるほど、モテねェだろうが」

「ちょっひどっ!!…あのなー言っとくけど、そんな銀さんに惚れたのはどこの誰ですかー?」


嫌味を重ねても、やっぱり銀時の方が一枚上手…
それを言われてしまっては何も言い返せない。


「…うるせェ」


悔し紛れにそう答えると、クスクスと笑われ顔は熱くなるばかりだ。
そんな俺の髪を優しく梳いていた手は、背中にまわり俺の体をフワリと抱きしめた。


「まっ、女よけは冗談」

「………」

「…俺が愛を誓ったのは十四郎だけって意味でつけたかったんだ」


…また、こいつは…
どうしてこんなにも簡単に俺の心を捕まえてしまうんだろう…


「…そんなクサいセリフ、よく言えるな」


そのクサいセリフに鼓動が速くなっている自分の事は棚上げして、そんな事を言ってみる。
苦し紛れの悪態だ。


「こんなクッサいセリフでも、十四郎には言えちゃうんだなぁーこれが。愛ゆえに?」

「……なんだそれ…」


素っ気無い返事をしようと思うのに、銀時の言うこと全てが甘く耳に響き…それは確実に
表情に出てしまっていると自分でもわかってしまうほど、顔が熱かった。
ここまで自分が崩れるほどに、銀時に惚れてしまっているなんて…
自分自身びっくりだ。

…惚れている、なんて簡単に口になど出来ないが、少しぐらいなら…


そんなことを考え、首にぶら下がる指輪にそっと触れてみた。






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