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□「溶けないうちに」
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「溶けないうちに」





暑い日差しが降り注ぐお昼時。

蝉の鳴く声がとても耳障りだ。
ただでさえ、暑苦しい隊服のせいでイラついているのに、さらに苛立ちが増す。

土方は煙草の煙を吐き、空を見上げた。
雲ひとつない空が晴れ晴れし過ぎて憎らしくなってくる。


「土方さん、ちょいとジュース買ってきてくれやせんか?俺のおごりなんで。」

「あァ?オメェのおごりたァどういう風の吹きまわし―…って!それ、俺の財布じゃねェかァァ!!いつ取りやがったっ!!」

「土方さんがボケーっと煙草の煙を吐いてるときでさァ。気づかねェなんて、暑さで頭やられたんじゃないですかィ?」

「そりゃ、オメェの頭だろが。返せ。」


土方は沖田の手から財布をひったくると自動販売機へと向かった。


「さすが、土方さん。俺、コーラがいいです。」

「誰が奢るかっ!勝手に買って飲めよ!」

「うわーひでぇや。それを世間ではパワハラって言うんですぜ?」

「言わねェよ。ただお前が駄々こねてるだけだろが。」


自動販売機の前で言い合いをする二人に、通り過ぎる人も何事かと視線を向ける。
真選組が言い合っているのだから余計目立つ。


「ちょっと、お客さん。困りますよー店の前で騒がれちゃ。余所でやってくんない?今日売上げ出ないと家賃どころか今日の晩御飯もままならないよ?どうしてくれん―…あっ。」


店の奥から文句を言いながら出てきた人物は、二人の良く知る男だった。


「旦那。こんなところでアルバイトですかィ?精が出ますねィ。」

「アルバイトじゃなくて、仕事ね、仕事。そっちこそ、こんなアッツイ中、見回り御苦労さん。なんだったら寄っていかね?冷たーいアイスもあるけど?」


銀時がそう言って店の入り口に貼ってあるポスターを指差す。
アイス全品値引き期間中!と言う文字がでかでかと書かれている。
こう暑いと、食事処もアイスで客引きでもしないと客が来ないのだろう。


「見回りの最中だ、いらねェよ。行くぞ、総悟。」


土方が踵を返しながらそう言ったのだが…返事がない。


「総悟っ!!」

「あのさ、総一郎君なら店の中入ったけど?」


…あの野郎っ。


「もちろん、土方も来るよね?」


チラリと銀時を見やれば、嬉しそうに笑いながらクシャリと俺の前髪を撫でた。


たったそれだけのことにドキドキしてしまうなんて…

…くそ。なんか、悔しい…。


土方はパッと顔を上げると、大股でズカズカと店の中へ入って行く。


「総悟見つけたら、とっとと帰るからな。」


そう吐き捨てながら歩く土方の後ろ姿を見て、銀時はクスクスと笑っていた。






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