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□「君がいてくれるから…」
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*銀時誕生日フリー小説(切甘)*

フリー期間:2009/10/10〜10/20

(配布は終了いたしました。)

***




「君がいてくれるから…」





あー…体イテェー。


日が落ち始めた頃、銀時は両手を大きく伸ばし関節をボキボキいわせながら、帰り道を歩いていた。

今日は銀時の誕生日とあって、神楽たちが新八宅で盛大にパティーを開いてくれたのだ。
まぁ、まともなパティーになるはずもなく…

メガネとゴリラのストーカーは乱入してくるし、どっかの男嫌いのお嬢さんに背負い投げされるし、神楽は俺が食う前にケーキ完食しちまうし…
あれ?これ俺の誕生日パティーだよね?とか、ありえない疑問まで浮かんでくる始末。

…でもまぁ、あいつらなりに祝ってくれてることは、正直嬉しい。

ただひとつ心残りと言えば、十四郎に会えなかったことかな…。
連絡もねェし。仕事が忙しんだろうけど…やっぱり会いたかった。
誰よりも十四郎に「おめでとう」って言って欲しかった。
それだけできっと、この世に生れてきたことを一生感謝できる気がする。


銀時はため息をつき頭をガシガシ掻きながら、二階の万事屋へと続く階段を上っていく。


ふわっ


一瞬、馴染みの香りが鼻をかすめた。
銀時はパッと顔をあげると一気に階段を駆け上がった。

そこには、いましがた会いたいと思っていた相手の姿が…
煙草を片手にいつもの綺麗な顔で、小さく微笑む。


「よう、遅かったな。」

「…十四郎。」

「何呆けてんだよ。テメェの誕生日、祝いに来てやったんだろが。喜べよ。」

「…いや、えっと…うん。」


まだ目の前に十四郎がいることが夢のようで…
気付けば無意識に十四郎を抱きしめていた。
少し冷えた体が俺を待っていた時間を物語る。


「うん。すげー嬉しい。…今日は会えねェと思ってたから。」

「…ハイピッチで仕事終わらせてきたのに、オメェが居ねェから―…」


しゃべりながら少しシュンとなる十四郎が可愛くて、おでこにキスを落としながら十四郎の話を繋ぐ。


「待ってて、くれたんだよね?」

「…ん。」

「ありがと。」


もう一度、ぎゅっ、と抱きしめると十四郎は嬉しそうに俺の肩に顔を埋める。
そのまま、十四郎はこちらに顔を向けると、少し顔を赤らめがらポツリと呟いた。


「…今日、一日だけ…何でも言うこと聞いてやる。」

「…へ?」

「プレゼントとか、忙しくて買ってる暇、なかったんだよ。だから、その…」


一瞬、自分の耳を疑ったが、どうやら十四郎は本気らしい。
いつもなら絶対こんなことは言わない、言わないのに…今日は俺のために言えちゃうんだ。
…あーもうっ!可愛すぎる!!


銀時はより一層強い力で土方を抱きしめた。

こうやって傍に居てくれるだけで、暖かくて、嬉しくて、幸せで仕方ないというのに…
どこまで俺を喜ばす気なんだろう。


「じゃあさ、『銀時、愛してるよ』とか『ごはん?お風呂?それとも…オ・レ?』とか言っってくれちゃったり―…」

「却下。」

「えェェ!!ちょ、何でも聞くって言ったのにィィ?!」

「…そ、そう言うのは論外っ!!もっとまともなこと言えよ!!」


銀時の腕の中でうろたえる土方は、顔が真っ赤だ。


「えーじゃあ…海。」

「うみ?」

「うん、海。夕日が綺麗な時間帯なんだよなー、一緒に行かね?」


銀時はそう言いながら、土方の顔を覗き込む。


「…行く。」


十四郎が目を輝かせながら反応するもんだから、こっちは口元が緩みっぱなしだ。
十四郎の髪の毛をクシャクシャと撫でてやれば、少し照れたように俯いた。






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