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□「4月1日の休日」
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「4月1日の休日」





「なーに怒ってんの、奥さん」

「誰が奥さんだ」


万事屋お馴染のソファーでジャンプを開く俺の隣には、訪問してきたときと変わらずムスリと眉間にしわを寄せ不貞腐れている恋人がいた。
いつもに増して機嫌が悪い様子に、クッと小さく笑みがこぼれる。


「んな怒んなくてもいいだろ。おかげで万事屋でのんびりできるわけだし?」

「いいわけあるか!俺が居ないとどれだけ仕事溜まると思ってんだっ!!」


まぁ、確かに。こいつがいないとまともに仕事しない奴らばかりだが…あいつらの言わんとしてることもわかるわけで。



「騙された」



朝っぱらからいきなり訪問してきたと思ったら開口一番にらしくないセリフを苦々しく吐かれ何事かと思えば…
真選組のやつらに休暇を勧められ、それを断ったらエイプリルフールをダシに無理やり休暇にさせられた、とのこと。


「あー…まぁ、けど今更ウダウダ言っても仕方ねぇだろ。どうせあいつら聞く耳持たねーよ」


おそらく働き詰めの土方をなんとか休ませようと思案したのだろうが、かなり無理矢理だ。
だが、こうでもしないとこの男は休まないと知っているがゆえに、ここは大人しく従わせるのが定石だと諦めるように説得するも、本人はやはり納得がいかないようで…


「………チッ」


イライラしながら袖の袂を探り煙草を取り出そうとして、自室に置き忘れたことに気づいては溜息を吐く。
さきほどから同じことを何回繰り返す気だと言ってやりたくなるが、それを言えばまた機嫌が悪くなるだろうからあえて口にせず、ジャンプをパタリと閉じた。


「んなに口寂しいなら銀さんがあっついキスしてあげましょーか?」
「いらねぇ」
「ちょ、即答ってヒドっ!!」

「それより金。煙草買いに行ってくる」

「さらにひどくなったよね?!これ!!ってかウチに金があると思うな税金泥棒っ!!!」

「ああ、すまねぇ…財布を忘れたとはいえ万年金欠野郎に金たかるなんざ、一生の不覚だわ」

「お前もうどんだけ俺を蔑めば気が済むのォォォ?!!」


人の悲痛な叫びもそっちのけで煙草煙草と呟く姿に少しばかり苛立ち、それでも…


…屯所に帰る気はないのね


煙草煙草という割には席を立つ気配のない土方の様子に、少しばかり安心感を覚える。


ただの何の変哲もない、日曜日の朝。



…だと思ったんだけど。



「なぁ、土方」


なんだ、と黒い双眸がまっすぐこちらを見て


「無理矢理取らされた休暇に俺のところに来たってことは…そういう意味で受け取っていいんだよな?」




小さく揺れた。




…あー…こいつはなんでこー…

不意打ちの可愛さをみせるんだろうか…




スルリと腕を掴み、土方の唇に触れるだけのキスを落とす。
ゆっくり角度を変え、もう一度。
何度も何度も小さくキスを送りそっとその身体をソファーに横たえ顔を覗きこめば、上気した頬で恥ずかしそうに唇を結ぶ表情に…背筋がゾクッと震えた。


「そんな顔されっと苛めたくなるじゃん」

「っ…いきなり盛ってんじゃねぇよこの野郎」

「土方が可愛いからいけないんだろー」

「ウルセェ黙れムカつくしね」

「はいはい」

「テメェなんて嫌いだ」

「うん」

「…大っ嫌いだ」

「うん」

「………」

「俺も、大っ嫌い」


変な会話だ。
ぼんやりそんなことを頭の隅で考えながら、頬を染め『大っ嫌い』だと言ってくれる土方にどうしようもなく笑みが零れてしまう。
ニヤニヤしてるのを咎められて髪を思いっきり引っ張られるが、それも気にならない。
あ、いや、うそ。痛い禿げそう。
激しい照れ隠しに見舞われながらも土方の唇にかみ付けば、応えるように舌を絡められ喜びに身体が震える。
ちゅっ、と唇が離れた直後、今度は何かを訴えるかのように髪の毛を引っ張られた。


「…手加減しろ」


そう言ってチロリと唇の隙間から見せつけるように差し出された赤い舌が、理性を呆気なくそぎ落としてしまう。


…それは、もっと、って意味?


聞くまでもないか…とクスリと笑みをこぼして、いつも以上に素直な土方の唇を塞ぐと黒い髪をそっと撫でた。





end



***



おまけw



「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い」

「…んな連呼しなくても。ほら、普通に“好き”って言ってみ?」

「………」

「え、なんでそんなに嫌そうなの?俺そんなに愛されてない?」

「………」

「ほらほら。嫌いって連呼してたときみたいに軽く言ってみろって」

「………………………………むり(赤面)」

「………(あれ、ちょ………なにこれ、赤面しながら小さく『むり』とか…逆にトキメクんですけどォォォ?!!!)」



***


エイプリルフールにそんなやり取りしてたら可愛いな♪

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