+ gintoki × hijikata +
□「甘さ控えめ?」
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はぁ、と土方はため息をついた。
こんな感情、銀時にはさらしたくない。
嫉妬心に駆られた自分なんて、きっと恥ずかしくて目も当てられない。
…あぁ、俺はいつの間に…こんなに、銀時の事を好きになっていたんだろ。
自分の独占力が強くなっていることに、自分自身、驚いている。
なかなか会えなかったことが、それに拍車をかけていた。
…こんな自分を知られたら…
そう思うと、胸が苦しくなる。
「とーしろー?」
不意に後ろから呼ばれ、ビクッと肩が揺れた。
そんな土方を見て、銀時は小さくため息をつくと、ケーキが乗ったお皿を机へ置いた。
そして、土方の横に座り、そっと手を繋ぐ。
「…十四郎。俺に何か言いたいこと、ある?」
「…別に。」
「別にって顔じゃないよ?…それに、十四郎にそんな顔されたら…胸が苦しい。」
土方が顔をあげると、銀時は優しく笑っておでこにキスをした。
それを合図にするかのように、土方はゆっくり話し始めた。
「…銀、が、他の誰かと、過ごしてる時間があるって思ったら…嫌で。
…でも、こんな気持ち、恥ずかしくて―…カッコ悪りぃ…。」
手で顔を覆いながら顔を背ける土方。
銀時はその手を取ると自分の元へ引き寄せ、手のひらにキスを落とす。
手のひらから唇が離れると、銀時は嬉しそうに笑った。
「何それ。めちゃくちゃ嬉しんですけど。」
「…嫌じゃ、ねぇのかよ…?」
「嫌なわけないじゃん。それって、十四郎が俺の事、大好きってことでしょ?」
そう言われ、一気に顔が熱を持つ。
「俺だって、いっつも嫉妬してるよ?十四郎はみんなに好かれてるからさー…たぶん、俺の方がカッコ悪りーくらい嫉妬してる。」
「…ホント…か?」
「うん、ホント。…嫌?」
土方はブンブンと首を横に振った。
嬉しい…それって銀時も俺に独占欲を持ってくれてるってことだよな?
自然と笑みがこぼれる。
銀時を見やれば、笑顔で俺をそっと引き寄せ、耳元で囁く。
『十四郎は、俺のモノ。』
そんなに甘く、優しく囁かれたら、文句の一つも言えやしない。
…なんか、悔しいな…。
土方は銀時の首に腕を回すと、仕返しとばかりに耳元で小さく呟く。
「銀は、一生俺のモノ…だからな。」
自分で言っておきながら、後から恥ずかしさが込み上げて来る。
銀時の顔がまともに見れない。
「…可愛い。てか一生十四郎のモノになれるとか、俺って幸せ者じゃね?」
ギューッと俺を抱きしめる銀時を抱きしめ返す。
…俺も今、幸せ者だよなぁ。銀時の体温が、気持ちいい…。
銀時の肩におでこを擦りよせながら、ふと、机に目が行った。
「銀。ケーキ食べねェの?」
「あっ!すっかり忘れてた!!」
銀時がケーキの事を忘れるほど、俺の相手をしていてくれたことに嬉しさがこみ上げる。
「はい。こっちは十四郎の分ね。ちゃーんと甘さ控えめにしておきましたー銀さん偉い!」
「…サンキュ。」
「…じゃあーハイ、アーン。」
「へ?」
驚いている土方を余所に、銀時はケーキをすくったフォークを土方の方へ差し出す。
勢いに押され、そのケーキを頬張る。
うん。確かに、甘さ控えめ。
「ん。頬っぺたにクリームついてる。」
ペロッ
銀時は土方の頬についたクリームを舐めとった。
「…///!!」
「甘くて美味し。」
「…甘さ控えめなんじゃなかったのかよっ。」
「んー?今の十四郎の顔、めちゃくちゃ甘かったけど?」
ニヤニヤしながら唇を舐める銀時。
キッと睨むも、頬を真っ赤に染めた顔では銀時を喜ばすだけだった。
そして軽く舌打ちをする。
悔しいけど…
…反論できない。
俺も今の一瞬を、甘く感じてしまったから…
そっと触れるように
銀時が重ねてきた唇は、どんなものよりも…
…甘かった。
end
→あとがき