どちらかが女だったら良かったのに

そう呟いた白い横顔を、俺はまじまじと凝視してしまった。


平行世界の存在する可能性について



思わず女になった劉備の姿を想像して、呂布は首を捻った。
あまり今と変わらない、気がする。
だが現実には劉備は男だ。そして己も。

どちらかが女だったら、なんて、無理に決まってるだろうが

そう返した俺を、劉備はちらりと流し見て

そうですよね

と何の感情も滲ませずに言う。

でも
でも
私が女だったなら、貴方は私をさらってくれたでしょうに

思わぬ言葉に低い唸り声が出た。

さらって欲しいのか

いいえ、まさか

劉備は笑ってみせた。
そうだろう。劉備はもう自分とは違う道に目を向けている。

ただ
私が女だったなら
何も考えずに貴方の手をとれたのになぁ

美しい横顔だったが、その瞳には陰がさしている。
そんな儚い瞳を壊さないよう、ゆっくりと後ろから抱き締めた。

俺はお前なら、いい
お前が望むなら
この世界からどこか遠くに連れていってやる
だから
だから、なぁ

劉備が俺を見上げる。

俺を置いてどこかに行こうなんて考えるなよ。
自分だけ、なんて 考えるなよ。

最後の言葉は、声には出来なかった。

劉備は女にはなれないし、俺も女にはなれない。
劉備をどこか遠くに連れていく事も不可能だ。

既に決別の道を選択をしてしまった劉備が、俺と同じ道を歩む事も、できない。


何故なら世界は常に一つで、もしもなんて事は無いのだから。







口にするのは無意味だと知っているから
最後の言葉は 声には出来なかった。











―――――――
『お前がいる今この場所以外に、価値のある世界など』
久しぶりの拍手文がこんなんかよー、みたいなね(・∀・)
補足としましては、劉備と呂布の決別直前、曹操が呂布に戦闘をしかける前日の話です。
私の中では呂布が劉備を裏切ったのではなく、劉備が呂布以外との未来を選択した結果にあの戦いがあったと思っていますのでこんな話に。(ほら妄想するのは個人の自由だから)
『。』のついていない部分が会話文です。
07.05.20

Clap res⇒DiarY


A word?



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