短編
□黒い雨
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雨降りの日、ユウタは傘もささずに外にいる
ミチヒロがすぶ濡れになったユウタの側に行き、声をかける
「おい…風邪引くぞ?」
「…」
雨に打たれたままユウタは空を見上げいた…
「美しくない…」
「は?」
「産業革命の起きる前の空は…どんな空だったのかな…?」
ユウタは時々突拍子も無いことを言う
ミチヒロにはユウタの考えていることが理解できなかった
「空って…まあ綺麗だったんじゃねーの?」
「美しさは…二種類あるんだ」
「おい、俺の答えは無視かよ」
ユウタはミチヒロを見ずに、まだ空を見ている
ユウタの顔がどこか切な気だった
ユウタはミチヒロを真っ直ぐ見て話す
「自然からある美しさと人が作り出す美しさ…どちらも個々にあるもので決して交わってはいけないんだ…」
「なんでいけねーの?」
「それは…一方がもう一方を滅ぼしてしまうから…」
「それが…現代の空ってことか?」
ユウタは静かに頷き、目を伏せる
雨に打たれたユウタが神秘的だった