アス受け文

□バレンタイン企画
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 アスランの斜め後ろを歩くキラは、いつになくムスッとしていた。二人で出かける前からこの状態でかれこれ1時間にはなるだろうか。アスランはため息をついて振り返った

「いい加減、機嫌なおせよ」

「むー」
 キラが上目使いに睨んでくる
「しかたないじゃないか・・・俺のチョコを子供たちがほしがるとは思わなかったんだから・・・」
 アスランは眉を八の字に下げおっとりとした困り顔をつくった

 

 

 

 今日は2月14日。カガリに無理やり休みを取らされたアスランはキラのところにやってきた。そこではラクス達が子供たちに配るチョコレート菓子を作っていた
「ある島国では、バレンタインに女のかたから想いを寄せる男の方にチョコを贈る習慣があるのだそうですよ。ですから、今日は皆さんでチョコレートを作ってますの。」
 そう言ってラクスは微笑んだ。
 早速アスランのチョコがほしいとキラが言い出す。
「何で?」
 きょとんとして、アスランはキラを見つめた。
「だーかーらー、好きな人にチョコをあげるんだってば。」
「ラクス達が作ってるじゃないか」
「僕はアスランが作ったチョコがほしいの!」
 さっぱり要領を得ないアスランはキラを見つめたままだ。普段は聡いのに、どうしてこういうことだけ鈍いのか・・・。が、アスランと付き合いの長いキラは諦めない
「アスランは僕のことが好きじゃないの?」
「うっ・・・」
 来た。キラの僕のことが好きじゃないの?攻撃。アスランはこれにとても弱かった。どんなに嫌がってもそれを言われると回避不能になってしまう。それで何度だまされたことか・・・。(全然学習してない・・・)
 そして必然的にアスランもチョコを作ることになってしまった。
「すみません。ラクス・・・」
「いいんですのよ。材料はそこにあるのを使ってください。エプロンもお貸ししましょう」
 ラクスもとても嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。
「勿論。わたくしにもくださいますよね?アスラン」
「エッ?!・・・は、はい・・・」
 ラクスにニッコリと微笑まれ、嫌とはいえないアスランだった。キッチンはラクスを中心に子供たちも混じってお祭り騒ぎである。アスランは材料をわけてもらいラクスの見よう見まねでなんとか何個かつくった。出来栄えは・・・まぁまぁだとアスランは納得する。細かい作業は得意だが、如何せんアスランには美的センスがない。自覚はあるし仕方ないと思っていた

 

 いざ!おやつの時間。キラはワクワクしていた。戦争が終わって今日ほどおやつの時間を楽しみにした事はない。他の子供たちはすでにチョコレートを食べていた
「はい」
 隣に座ったアスランからキラの前に小さな包みが差し出される。心なしかアスランの頬が赤い
「あ、ありがとう!!」
 キラは感無量といった面持ちで受け取った。アスランからチョコをもらうなんて何年ぶりだろう。思わず遠いところへ思考が飛びそうになったとき子供の声が発せられた
「キラのチョコはなんで二つあるの?」
 男の子がキラの側にやってきてものほしそうに見つめた。ラクスからもらった包みとアスランからもらった包みだ。子供たちはラクスからチョコを平等に分けてもらっていたが、食べ終わってしまった男の子はキラの一つ多い包みに気がついてしまったのだ
「これはアスランが僕にくれたんだ」
 キラの顔はだらしなく緩みっぱなしだ。
「僕もほしい!!」
 その言葉にキラはぎょっとなった。他の子供達も集まってくる
「僕もー」
「キラずるい」
 子供たちは次々に声を上げる
「あ・・・えーと何個か入ってるから・・・分けたら?」
 アスランが助け舟を出した。つもりだった。勿論キラはとんでもないと思う。アスランのチョコは全部独り占めするつもりだったのだ。誰かにあげる事など全く考えていなかった
 仕方なく包みを開けてみる。ラクスのチョコと同じく、いろんな型にチョコをいれ固まったものに模様を入れたりトッピングをしたりしたものだ。さすがにハートが描いてあったりはしない・・・
 アスランは当たり前のように包みから一つチョコを取って子供に手渡した。
「あっ・・・」
 キラが心の中で涙していたことは言うまでもない
「ありがとう」
 子供が元気一杯にお礼を言う。
 アスランは1個ずつチョコを配っていった。そして最後の1個も子供たちに配られたのだった
「ええーっ?!!なんで?なんで僕の分がないの?!」
 キラは呆然と立ちつくした
「ごめん。余らないとは思わなかった・・・」
 甘いよ!!甘いよアスラン!!今なら泣いていいはずだ。アスランにチョコを頼んだのはキラなのだ。それなのに頼んだキラにチョコがないなんて
「僕の分のチョコ〜〜〜」
「キラは年上なんだから我慢してくれ」
「僕が頼んだんだよ。僕が一番ほしかったのに」
「子供みたいなこというなよ。なくなったものは仕方ないだろ」
 ぎゃーぎゃーと騒ぎ出した二人にラクスは
「散歩でもしてらっしゃい」
 と笑顔のまま言った。目が笑ってないですよラクスさん
 今は2月。北半球は冬だった。二人は寒空の下、体良く追い出されたのだった


 

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マルキオ邸のある無人島(でいいのだろうか?)
って雪が降るようには見えないけど・・・
気にせず北半球ということで(汗)
時間がかかりそうなのでわけます
初up2005,2,22
ラストup2005,3,5
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