アス受け文

□言えない
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 連合軍からMSを奪って、俺は興奮していたのかもしれない

 バスターを見上げてディアッカは息をついた。
 いつもだったら、夜に目が覚めても無理やり眠ってしまうのに、今日に限ってそうもできずディアッカはMSの格納庫へ足を運んだ。格納庫には先日奪ってきた自分のMSがある。それを確かめたかったのかもしれない
 別に何するわけでもなく一頻り満足して部屋に戻ろうと踵をかえす

 

 

 

 ふと廊下の向こうに誰か歩いているのが見えディアッカは焦った
 軍の施設は24時間体制だから誰が歩いていもおかしくはないが、その人物は白っぽくボーッとしていたからだ
 が、近づいて胸をなでおろす

「アスランじゃないか」
 声をかけると、ゆっくりと視線があう。なにかおかしい。いや全部おかしいだろ

 アスランは軍から支給されているシーツをかぶっていた。シーツの下からは素足が見える。裸足で歩いてきたようだ

「寒い」

 ぽつりとアスランがもらす

「はあ?」
 確かにそうだろう。夜の気温は18度以下に設定されている。アンダーの上にシーツを羽織っているようだが寒いには違いない。しかも裸足だし
「何やってんの、お前?」
 アスランの虚ろな様子にディアッカは早々に返事を待つのを諦めた。アスランの背中を軽く押す
「部屋に戻るぞ」
 少しだけアスランは躊躇ったが、ディアッカは強引に背を押した

  

 

 

 

 

 アスランの部屋の扉を開け、ディアッカはアスランが出歩いていた理由がわかった気がした
 ひんやりとした薄暗い部屋に入り、明かりをつける
 2人部屋なのに片方はきれいに片付けられていて言いようのない違和感がそこにあった。以前そこに居た者はもう二度と戻ってこない

 アスランを引っ張ってきて強引にベッドに座らせる

「なんか飲み物もってくるから。ここに居ろよ」
 そう確認してディアッカは部屋を出た。アスランは相変わらず虚ろだったが、ディアッカが立ち去る気配に少しだけ瞳を揺らした

 

 

 

 

 自販機のホットを押しながらディアッカはさっきのアスランの様子を思った

『アイツ、あんなに繊細だったっけ?』

 ディアッカの中にそんなアスランは存在しなかった。寧ろいつも取り澄ました小憎らしい奴である

 だが、薄情な奴じゃない

 なぜか落ち着かない気分になって、ディアッカは急いでアスランの部屋に戻った

 

 

 

 ドアが開く音にアスランは顔を上げた。ディアッカを確認すると落胆したようにまた俯く

 ディアッカは持ってきたホットココアをアスランに飲ませ、ベッドの中へ強引に押し込んだ。布団をかぶせ部屋を出て行こうとすると、アスランに裾をつかまれる
 頼りなげな視線とぶつかり流石にディアッカも焦った。これ以上どうしろと?

「すまない」

 小さな声で呟くアスランに仕方なく向きなおす
「世話かけたと思ってる?」
 大きな瞳をうるうるさせて頷く様子は庇護欲そそるもので、ディアッカはそんな柄じゃないと喚きたくなる
 アスランの掴んだ手を引き離し、布団にしまいながら
「すまない、じゃなくて、ありがとう、と言ってほしいね」
 と言えば、アスランは潤んだ瞳をさらに揺らしてありがとうと言った

 ディアッカは、子供みたいだと思った。夜が怖いと言って泣く小さな子供

『俺は父親かよ』

 そんなもんになるつもりは毛頭ない

「早く寝ろよ。寝るまでいてやるから」

 

 

 珍しいものでも見るようにディアッカを見ていたアスランは暫くして眠ってしまった
 意外にあっさり寝てしまったことにホッとしながら、布団をかけなおすためにベッドに近寄る
 まつげなげーとか、女ならかなりの美人なのにとか不埒な事を考えたのは秘密だ

 薄く開いた手になんとなく指を通してみる。次の瞬間ぎゅっと握られてディアッカはあせった

『げっ!放れない?!』

『え?!何?!無意識?起きてくんないし!!』

 いい加減とばっちり体質の自分に泣きそうになるが、ディアッカは立ち直りも早かった
 このまま寝てしまおうと気持ちを切り替えると、ベッドから落ちないよう布団の上からアスランを抱きしめ、よこになる。面倒臭い事を考えるのは苦手なのだ
 そのままディアッカは睡魔に身をませた

 

 

 

 

 

 

 いつものように定時に目を覚ましたイザークはディアッカが居ない事に気がついた

『夜中出てったきりか』

 昨夜の事を思い出しながら手早く身支度を整える
 そこへディアッカが戻ってくる

「朝帰りとはいい度胸だな。どこへ行っていた?」
「え?!えーと・・・」
「大方、女のところか、くだらん」
 そうはき捨てて出て行こうとするイザークに、ディアッカは諦めがついた。変なところからばれても面白くないしな

「アスランのとこ」

「は?」
「だから、アスランのとこだってば」
 気まずさにディアッカはぼりぼりと頭をかいた

「・・・ほぅ貴様にそんな趣味があったとはな」
「変な想像すんなよ。なんにもねーって」
「なんにもなくて貴様は朝までいたのか」
「とにかくそんなんじゃねーよ!!」
 寝起きのボーっとしたアスランや、マジに女顔してんだなーと寝顔を眺めた事を思い出し慌てて否定する

 

 

 昨夜あったことを一通り話すと意外な答えがイザークから返ってきた

「知ってる」

「へ?!いつから?!」
 ずっと知ってた?でも黙っていた?
「アイツはバカだからな昼間は平気そうな顔をしてば、ばれないと思っている」
「俺は昨夜まで気がつかなかったけど、毎夜出歩いたりしてるのかアスランは?」
「そうではない」
「じゃなんで・・・」
 もしかして、イザークってアスランのことよく見てる?

「早くつぶれてしまえばいいんだ!!」

「あんな軟弱な奴・・・」

 そのとき不意に気がついた。奴がエースだから辞める事も辞めさせることも出来ない事を

 無駄に優秀なんだ

 だからイザークはやたらアスランに勝負を挑むのか

「イザーク。お前・・・」

 何も言えなかった。俺たちが戦争の道具でしかないことが分かったから

 

 

 

END


 

 

 

 

シリアスなど毛頭書く気はなかったのですが
突然浮かんできて書かずにはいられませんでした
(でも、最後は兎も角、ギャグだろうコレ(笑)
実はワタクシ、ディアアス大好きです。もっと読みたいなー(かなり切実
ディアアミリを否定してるわけじゃないのですがね
本編ではディアミリ推奨。でも、同人ならディアアスもありかなと(笑)
タイトルについてちこっと
言えないは、ディアッカの言えないだったり、アスランの言えないだったり
イザークの言えないだったりするのですが
如何せん描写不足。書き直したいけど結局このままで終わりそうな気もしてきた(汗)
ラストup2005.7.6

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