2万HIT記念リクエスト
□ショウメイ
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考え事をしたせいか、目が冴えてしまった俺は…雲一つない星空の下を歩いていた。
姉貴に見つからないように家を出ると、宛てもなくフラフラと…ただ“今”という時間を全身で受け止めながら、のんびりと進んでゆく。
…30分程歩いたところで、少し公園で休もうとした瞬間に携帯が鳴り…俺は発信相手の名前も見ることもせず、すぐに電話を取った。
「…早いのね」
「やっぱり雨宮か…どうかしたのか?」
「…やっぱりって、なんなの?」
「…なんとなく雨宮からの電話な気がしたからさ」
そう思った根拠はなく、ただ“雨宮の声が聞きたかったから”という願望から発された言葉だったのだが…それは恥ずかしくて伝えることはできなかった。
「それで、こんな時間にどうしたんだ?」
「…別に。…ただ…寝付けなかったから」
「雨宮もか!?」
「…夜科も?」
「あぁ…だから気晴らしに散歩してるんだけど……そうだ!!良かったら雨宮も一緒にどう?」
「散歩…ね…」
そう言って雨宮はしばらく黙り込み…またゆっくりと口を開いた。
「…そうね、行くわ。…でも着替えたいから…ちょっと待って」
「りょーかい!それじゃ10分後に雨宮のマンションで♪」
そう伝えて電話を切ると…俺はライズを使い、雨宮のマンションへ急いだ。
…まぁ、時間的には全く急ぐ距離ではないのだけれど…思いがけずシンクロした心と、こんな月夜に雨宮の隣を歩けることが嬉しくて…3分後には目的の場所へ到着した。
なにもしていなくても…時は刻まれる。
今この瞬間にも、破滅へのカウントダウンは進んでゆく。
でも…だからこそ…“今”がこんなにも愛おしい。
…こんな“ありふれた日常”こそが…きっと“幸せ”なんだろう。
約束の時間より遅れて出て来るであろう雨宮を待ちながら、ふと顔を上げると…眩しい程に輝く月が、俺達の歩むべき道を…明るく照らしていた。
−Fin.−