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□A lie isn't told to my heart
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『…?……ここ…だよね?』
パッと見渡した限りでは…誰も視界に入って来ない。
『…!?』
その時、斜め後方から気配を感じ目を向けると…物影から1人の“見知らぬ女子”が姿を現した。
『………?』
…なぜか一言も発することなく…私を睨みつける。
「あの…なんでしょうか?」
呼び出されたにも関わらず放置される状況に耐えかね、こちらから問い掛けた。
「…一護君から離れて」
「………は?」
『く……黒崎…君??』
私の聞き間違いでなければ…呼び出されたのは“黒崎君”に関わることらしい。
「一護君にこれ以上近づかないで…って言ってるの」
…段々と私にも…相手の伝えたい意図がわかってくる。
「…どうしてですか?」
『………きっとこの人も…黒崎君のことが好きなんだ』
それは、私がどうこうすべきことではないし…口を挟むべきことでもなくて。
でも…言ってみれば“恋敵”の私に対して、“戦いの舞台から身を引け”というに等しい行為を強要するやり方は…到底納得できるものではなかった。
「……わからないの?アナタが傍にいると、彼はいつも困ったような顔をしてるのに…鈍いのね」
「……えっ?」
『……わ、私が…黒崎君を?』
…“そんなことはない”と否定出来れば良いのだけれど…そう言い切れるほど、黒崎君が笑ってくれた記憶もない。
『…』
「…なにも言わないところを見ると、自覚はちゃんとあるんだ。…本当に彼を想うなら…アナタは傍にいるべきじゃない」
“高圧的”とも少し違う言い回しに…私は言い返すこともできず立ち尽くす。
「……どうすべきか…1日ゆっくり考えることね。…明日の同じ時間、またここで待ってるから」
そう怒ったように捲し立て、“先輩”は去って行った。
…あの話し方からすると…無理矢理創った話であるとは考えにくい。
…私自身、心のどこかで感じていた“違和感”。
それを見ず知らずの…それも“黒崎君のことを好きな人”から伝えられ…心の不安が確信に変わった気がした。
黒崎君は優しいから…私の中にある不安を投げたところで、“そんなことはない”と一蹴し…全てを受け止め笑ってくれる。
…それはきっと…“楽しい”や“嬉しい”といった感情とは違い…“慰め”に近いのかもしれない。
それなら私は…どうすべきなのだろう?
…黒崎君のことが大好きで。
…ただ“黒崎君の幸せ”を願うべき私が。
…“私のため”ではなく“黒崎君のため”に…一体なにができるのだろう?
…わからない。
どれだけ悩み…迷ったとしても。
答えの無い葛藤の中…今にも泣き出しそうな私の心を映すような…重苦しい曇空を、一人見上げた。