3万HIT記念リクエスト
□A lie isn't told to my heart
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…水色がいないと、こうも静かなもんかと改めて思う。
まぁ…一人で歩いているのだから、当然と言えば当然なのだけれど。
普段通りの高校へと続く道を歩いていると…前方に見慣れた後ろ姿を見つけた。
『……井上…だよな?』
こんな始業に間に合うかギリギリの時間に、それも一人で登校する井上に会うことなどこれまでなかったため…一瞬目を疑ったが、さすがに見間違えるはずもない。
井上は考え事をしているのか、近寄る俺には全く気付く気配もなく…
「よぉ、井上」
「ヒィィィッ!?くっ……黒崎君!??」
こちらが驚く程の悲鳴をあげた。
「ワ…ワリィ、驚かせるつもりじゃなかったんだが…」
「ち、違うの…そうじゃなくて……あの、黒崎君に迷惑を…」
『……迷惑?』
…なにが“違う”のかはわからなかったが…とりあえず異常な程“慌てている”ことだけはすぐに理解できた。
いつもとは少し違うその雰囲気が気になり…
「井上…」
と話し掛けようとしたのだが、
「な、なんでもないよ!じゃあ私急ぐから…またね!!」
そう唐突に言い残し、井上は走り出した。
『急ぐって…目的の場所も時間も俺と同じだろ!?…しかもさっきまであんだけゆっくり歩いてたのに…な、なんだぁ???』
…明らかにいつもと違う井上の対応に、ハッキリとした違和感といくつかの疑問が浮かぶ。
拭い去れないモヤモヤを胸に…普段となにも変わらない道を、一人歩き続けた。