ショートストーリー
□海底の砂T35
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マリアナ海溝の底に鉄の塊が沈んでいる。
直径1メートル、幅70センチ、縦50センチの塊である。
40キロメートル離れた水深50メートルの海中を原潜M24が潜行していた。
「さっきから規則的な信号が入ってます」機器係が艦長に言った。
「何だろう」艦長は言った。
「わかりません」
「録音しておいてくれ」
「了解」
原潜M24はR国の警備パトロールをしている。
「さっきの信号だが某国の情報と一致した」艦長は言った。
「どういうことでしょうか」副艦長は言った。
「海底に何かがある」
「というと」
「危機にあっていると」
「救難信号でしょうか」
「わからん」
「行くんですか」
「どこへ」
「助けに」
「何を」
「だから」
「まあ、ないな、それは」
「1万メートル以上の海底ですからね」
「うん、昼食に行って来る」
「このまま自動航海でいいですね」
「うん、いい」
海底の鉄の塊は何かを言っている。
真っ暗な静かな海底である。
(おわり)