とある科学の自由の翼
□第一話
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――7月16日
「あ、お兄様!」
「黒子?こんなとこで何やってるんだ?」
「風紀委員(ジャッジメント)として警邏中ですわ」
腕につけた腕章を上代に見せる少女の名前は、白井黒子。常盤台中学に通う中学一年生だ。
なぜ、白井が上代のことを『お兄様』なんて呼んでいるかというと、そういった性癖を上代が持っているからだ!………というわけではなく、ある事件をきっかけに知り合いになり、その後も何回か会っているうちに、いつの間にかそれが定着してしまったらしい。
「そうか。にしても、いい加減その『お兄様』っての止めないか?」
「お兄様はお兄様ですから、無理な相談ですわ」
ニコッと笑いながら告げる白井に、思わず顔を手で覆いため息を零す上代だった。
この問答も何十回と続けているが、一向に改善されないのだ。最早、諦めの域に達しようとしていた。
「それで、お兄様はここでいったい何をなさってますの?」
「ん?ああ、人を待ってるんだ」
「人ですか?あ、あのその方は殿方なんですの?!」
「へ?いや、女の子だよ」
白井のどこか焦った様子を不思議に思いながら質問に答えると、がっくりと肩を落とし重たい空気を背負っていた。
「そ、そうですの。でしたら、わたくしは「おにーちゃーん!」って、え?」
小さな五、六歳ぐらいの少女が上代に飛びつき、その後ろから少女の母親だと思われる女性が歩いてくる光景を見て、白井は目を白黒させた。