novel
□贈り物
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お兄ちゃんが家を出て数年。
僕が少し慣れてきた頃だ。
お兄ちゃんが遠くに行ってしまったのを、実感していたあの時は、泣いてばかりで誰の間にも壁を作っていた。
でもそんなことをしても、成長しないんだって、不器用ながら父さんが教えてくれた。
だから、僕は泣くのをやめて学校にも行き、友達を増やす事にした。
すると、お兄ちゃんがいなくても僕だけで生きれるんだってわかって、僕は少し成長した。
お兄ちゃんとあのキスをすることが出来ないのが少し寂しいけど・・・
「お兄ちゃん・・・」
口から漏れる小さな言葉。
勿論誰も返事をしてくれない。
成長したからって、お兄ちゃんを忘れてしまったなんてことはないのだから・・・
お兄ちゃんを恋しく思う時も欲しいもんだ。
僕の土曜はいつもあの湖に行き、お兄ちゃんを思い出すんだ。
そうしたら今迄堪えていた悲しみたちがすべてとんでっちゃう気がするから。
「あ、もうお昼だぁ!・・・ウサギさん、またねぇ♪」
あの時の子ウサギは、すっかり悟天に懐いて、悟天から離れようとしなかった。
「んぁーっ…、お前のお兄ちゃんと母さんが心配するよぉーっ?」
あの時このウサギは迷子で兄と母と逸れてしまっていたんだ。
そして悟天が探し出してやった。
それからというもの、悟天がこの湖に訪れると必ず遊びにくるのだ。
「また今度遊ぼうね〜!」
悟天はそう別れを告げるとあの日兄に抱っこされて帰った家までの帰路についた。
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