Die arzte

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「ちなみに、ヤってる時も『せんちょー』だ。」



シャチー。早く帰ってきてー。
おれの心の叫びに答えるがごとく、ノックもされずに部屋のドアがあいた。



「おっ待たせしましたー!!」



この際ノックなんてどうでもいい。こんなにシャチを待ちわびたことは未だかつて無かった。
元気よくドアをあけたシャチの後ろから、不服そうな表情の名無しさんが顔を出した。



「あのー……。これって何の罰ゲームですか…?」



先ほどまでシャチが持っていたワンピースに身を包み、落ち着かない手でスカートを握りしめながら登場した名無しさん。



「罰ゲームとか言うんじゃねぇよ。可愛いじゃん。」



シャチの後ろに隠れぎみの名無しさんを、シャチ自ら引っ張り出して船長の方に差し出した。



「ね。船長!ギャップ萌えしますよね!!」

「そうか…?………もう少し短い方がいいんじゃねぇか?」



と、船長は目の前の名無しさんのスカートを、足が露になるくらい持ち上げた。



「ぎゃーーー!変態!!」

「変態に言われたくねぇ。」



名無しさんは必死でスカートを押さえるが、船長もスカートを離す気が無い。



「いや名無しさん。結構似合ってるぞ。たまにはいいんじゃないか、そういうのも。」



おれしかまともに反応できる人間がいないので、取り繕ってみる。
名無しさんはまだスカートをめくる船長と格闘しながらおれを見て、「そ…そうかな…」と、少し照れた様子をみせる。



「でも落ち着かないっすー…。一人で着れないし。…これ、背中のファスナー。」



やっとスカートを持ち上げる事をやめた船長から逃れて、背中を見せる。

……え。

じゃぁ今着た時って………



「今だって、ベポにやってもらったんだよー。」



よかった。
シャチじゃなくて本当に良かった。そしてベポ、意外と器用すぎ。



「せんちょー、これもう脱いでいいですかー?」



黙って頷いた船長を見届け、嬉々とした名無しさんは『せんちょー許可が出たからもう行くねー!』と、止めるシャチを無視して部屋を出て行った。



「可愛いーのになー」



ぶちぶち文句をたれるシャチだが、意見にはそこそこ賛成だ。
しかしながら、ああいった格好をする場面は無いにひとしいよな。船で着てても作業の邪魔だし、戦闘になったりしたらもってのほか。島で船長と歩く時……と言っても二人とも賞金首。何がおこるかわからない。



「あ、船長も行くんですか。」



無言でドアへと向かう船長に声をかける。



「あぁ……。名無しさんのファスナー降ろしてくる。」

「そ…そっすか………」



わーい。聞かなきゃよかったー。
そのまま出ていくと思われた船長だが、ふと思いついたように立ち止まる。



「そういえば、ギャップの話だけどな。」

「はい?」

「普段の声とヤってる時の声にギャップがあるな、名無しさんは。聞きたかったら夜に隣の部屋に来い。」

「え。」



同時に固まったおれとシャチ。



「ただし、名無しさんの声でヌくんじゃねーぞ。」



至極楽しそうに口角を上げて。
パタン、ドアが完全に閉まってもしばらく守った沈黙をやぶり、シャチに向く。



「行くのか?」

「行かね。自信ねーもん。名無しさん可愛かったしアリだなと思っちまったし。」



うん。懸命な判断だな。
次に名無しさんがあんな格好するのはいつになることか。
それこそ罰ゲームでもなければ二度とないだろうな。



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