Die arzte

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船長がおれの部屋の戸を叩いたのは、シャチが「ギャップ萌え」について粗方熱く語った後だった。



「だからね船長!名無しさんみたいに普段男っぽい格好してる奴が、清楚ぉ〜なワンピース〜なんかを着たり?とかしたらそのギャップがいいんじゃないかと思うんですよ!」



おれだけならまだしも、船長にまで暑苦しく詰め寄ったシャチだが、船長は大して気にした様子もなく、しらっととんでもない事を言ってきた。



「そんな事より、なんでおれはあんな変態に惚れてんのか、ペンギンに聞きに…」

「いやそれは、おれが聞きたいっすよ。」



なんでシャチが答えるんだ、船長はおれに聞きにきたと言っただろうが。
……実際おれに聞かれても困る内容だけど。ってかなんちゅう事を人に聞いてこようとしているんだこの人は。そしてなんでシャチはその事にツッコまないんだ。



「だって名無しさんって、キレイめの顔してんのに帽子に髪全部入れちゃってるし、ツナギ着てるしでおれ最初男かと思ってましたもんー」



そういえば名無しさんが仲間になった時、既に船長に渡されたうちのツナギを着ていて帽子で顔も隠れぎみだったもんで、名無しさんを男だと思っていたクルーが何人かいるらしい。
まぁ元々名無しさんは私服も男っぽい格好が多い。
うちのクルーになるまで女一人で旅をしてきたらしい名無しさんにとって、男装ではないが男と勘違いされることは都合の良いことだったのだろう。

シャチはたいして船長の名無しさんに対する見解に興味がないのか、はたまた今まで散々おれに語ってきた熱が冷めやらないのか、また妙なことを言い出す。



「だから船長これ、名無しさんに着せてきまっす!」



突然どこからか取り出したそれは、先ほどシャチの話にあった清楚ぉ〜なワンピース的なものだった。



「どうしたんだよソレ…」

「前の島で買った!これで船長も名無しさんにギャップ萌え間違いなしっすよ!!」



若干引いたおれに何の迷いもなく答えるシャチに、突っ込み所が多すぎて眩暈。
しかしツッコむ前にシャチは『いってきます!』と部屋を出ていった。
色んな意味で置いていかれてるおれと、『ギャップ……?』と呟く船長が残された。



「…あんまりギャップなさそうですよね、名無しさん。」

「…あぁ?」

「いや、おれ達の中に居る時と船長と二人で居る時のギャップ、です。」

「………」



少し考えを巡らせたような様子だった船長が、おれを向いて質問を質問でかえしてきた。



「名無しさんがおれと二人の時、おれを何て呼んでるかわかるか?」

「え…?えとー………、ローさん、とか?」

「せんちょー、だ。」



悪い意味で期待を裏切らない女だな、名無しさん。



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