Die arzte

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名無しさんは朝からかなり機嫌がよろしかった。
朝飯を食いに食堂に入ると、不寝番だった名無しさんがすでににこやかにパンを齧っていて、見張りの交代をしたことが伺えた。



「名無しさん―。はよー。」

「うぃー。シャっチーん。おはよー。」



適当に朝食を載せたトレイと共に、名無しさんの前の席に座る。目の前の名無しさんは口を動かしながらも、顔がニヤついている。



「……何かいいことあった?」

「ふふー。えへー。あった!!コレ見て!!」



名無しさんの「いいこと」なんざ、どうせ船長絡みだろうと思っていたおれの溜息をものともせず、名無しさんは一枚の紙を差し出した。



「手配書?」



そういや今朝はニュース・クーが来てたな。
名無しさんが見せ付けている手配書には、麦わら帽子の少年が晴々と笑った写真が載っていた。3000万ベリー、麦わらのルフィ。



「弟なの!!」

「…は?!お前弟いたの?しかも海賊の?」

「うん!可愛いでしょ!?」



名無しさんの親類の話は初めて聞く。今まで話題に上らなかったから聞かなかっただけだが。

弟より先に島をでた名無しさんは、かれこれ3年は会っていないのだという。
名無しさんはおれに見せていた手配書を、また自分の視線に移す。



「グランドラインのどっかで会えるかもねー。楽しみ楽しみー。」

「そだなー…。…ってか、似てねぇなー。」

「あー。血ー繋がってないもん。私を拾ってくれたおじいちゃんの孫なの、この子。」



また初耳の話が出た。
孤児だったのかとのおれの問いに名無しさんは一瞬目を瞬いたが、またいつもの笑顔で否定した。



「違うよー。あのねー……」



名無しさんはぐっとテーブルに載りだし、声を潜めて話し出した。



「ここだけの話なんだけどね。」

「?…うん」

「私、違う世界から来たんだよね。」

「……………」



……何を言ってんだこいつは。
あぁ、変態の世界から来たのか、わかります。



「ちょっと…。何なのその信じてません顔は。」

「信じてねーもん。」

「なにー!せんちょーとペンギンは信じてくれたんですけど!」



船長のそれは愛ゆえ(笑)として、ペンギンまでもが信じるとは、名無しさんの話はそんなに信憑性のあるものなんだろうか、少し興味が湧いた。



「へー……。じゃー話してみ?」

「上から目線!!腹立つ!!」



そう言いながらも、夜呑む約束をして名無しさんはいそいそと仮眠に行った。



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