迷
□Alone
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『―――なぁ スザク。』
最近…いや、これからも圧倒的に-ゼロ-《自分で無い者の名》と呼ばれる方が増える中、久しく自分の名を呼んだのは
――小難しい本を読む、緑髪の彼女。
確かに名前を呼ばれたものの、独り言のように彼女は問い掛ける。
『イヴは何故アダムに戀をしたと思う?』
彼女にしては非現実的で抽象的な質問。
『彼女と彼しか居なかったからだと思うか?』
本に瞳を向けたまま、なんら表情を変えずに問われたその意図が、分からない。
ので、想うままに答えた。
「彼女と彼だったから…じゃ、ないかな…?」
………こんな答えで良かっただろうか、どんな答えを求められてたのだろうか?
――…"彼"だったら、どんな…――
「…… …ぁ……。」
彼女はまだ本に瞳を向けていたが、少し微笑んでいるようだった。
そうか。
彼女はもう
戀…いや、それに似て非なる感情を覚える事はもう(し)無いのだろう。
そして
その答えを出した 僕も。
彼 彼女 以外に。
<終>