BASARA短文

□ときには昔の話を
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―あー、やだやだ。また来たのか―

聞き慣れない蹄の音を耳にし、慣れた警戒態勢をとる。

蹄の音が止んだと思えば、次に近付くは人の足音。
その人物が刻むリズムを嫌でも覚えてしまっている。

「せっかく来てもらって残念だけど。旦那なら今日は留守だよ」

先手必勝、とでも言わんばかりに、相手の要件を聞く前に牽制する。

「Ha…それで、何であんたがいる?」

やって来たのは、奥州筆頭・伊達政宗。主の好敵手にして―

―下心丸出しなんだよ、変態竜が。

甲斐と奥州が同盟関係を結んでからというもの、何かしら理由をつけてはちょくちょく主に会いに来る。
主は気付いていないようだが、常に側に居り、もはや職業病とも言える鋭い人間観察能力を身に付けてしまった者から見れば、遠路遙々やってくる客人の目的など一目瞭然である。

「今日は休暇でね。優しい上司のおかげで、置いてけぼりってわけ」

「帰りは遅いのか?」

「さぁ…夕刻過ぎになるんじゃない?何か言伝あるんなら、預かっとくけど」

目的のものはここにはないんだ。だから早く帰ってくれ。

そんなことを思いながら、自分の置かれた境遇を簡単に説明し、要件を促す。
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