頂き物&捧げ物
□勇壮二虎の草臥れ鴉
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晴れ渡る空に浮かぶ下弦の月。
その中を一人走る甲斐武田は真田忍隊忍頭・猿飛佐助。
武田軍大将・武田信玄が命を無事遂行した佐助はその報告に急いでいた。
【勇壮二虎の草臥れ鴉】
「よくぞやった、佐助よ!」
報告を終え、労いの言葉を授かる。
何時もならばこれでおしまい、であるのだが。
「佐助よ…お主に暫し聞きたいことがあるのじゃが」
「なんです?大将」
先程の報告では足りなかったのだろうか。
得た情報と、それに対する己の見解は全て出し尽くしたつもりであったのだが。
「幸村についてじゃ」
「旦那に?」
「うむ…幸村は現在、一日にどれ程の団子を食しておる?」
「えーっと…軽く15本は」
信玄の問い掛けの真意がつかめぬまま佐助は答えた。
「佐助…お主は最近の幸村を見て、何か思うところはないか?」
そう問われ、佐助は幸村の様子を思い出してみる。
何時ものように鍛錬し、何時ものように信玄と拳で語らい、何時ものように団子を食う。
別段変わったことなどない。
「いえ、特には」
正直なその返答を聞き、信玄は溜め息を吐いた。
「まさか、お主が気付かぬとは…」