カラーレスシュガー


□眠たがりの蝶々へ
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僕は、今日も屋上へつながる階段を一段飛ばしで駆け登っていく。
生徒立ち入り禁止の看板の掛けられたドアを開けた。目の前には広い空と、広いコンクリートと、小さな君がいた。
相変わらず、文庫本を頭にかぶせ寝ている。

扉から一歩踏み出して、
「ユキ、起きろ。先生が呼んでる」と僕は言った。
『……』
返答なし、か。完全に寝てるな。
いくら今が昼休みだろうと、コイツは朝から此処にいて、ぐうたらしている。
その証拠に弁当箱と空のペットボトル、イヤホンとi Pod(多分充電が切れている)が、我が物顔で鎮座している。

「ユーキー」
仕方なく僕は、ユキの近くまで来た。
春の風が僕の顔を心地よく撫でる。
と、同時にユキの制服のスカートもヒラヒラ躍らせた。
白い太ももがチラチラ見える。

「パンツ見えてっぞ」
…嘘だけど。僕はユキを軽く蹴った。
『……』

ガン寝か、コイツ。ユキの隣に座り、顔の本を取り上げる。
夏目漱石の"こころ"。シブイ趣味だ。
ヒラヒラするスカートに漱石をのせ、動きを止めた。
本が乗りきらない端は、風に合わせてジタバタしている。
僕の精神衛生は保たれた。

『襲われるのかと思った』
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